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| ラストエンペラーと近代中国―清末中華民国
(
菊池 秀明
)
講談社による中国史新シリーズの第10巻で、清末の太平天国運動から日中戦争勃発の頃までの約100年間を対象に、近代中国の苦悩と希望の歩みを説き明かすものです。気が付いたことは以下のとおりです。<BR> (1) 中国近・現代史というと、惨憺たる暗黒の時代を対象とした上、何かしら思想含みの堅苦しい説明がなされるというイメージが強いのですが、本書では、当時の中国が置かれた過酷な環境に触れつつも、新しい機運の胎動といった積極的側面に注目し、改革に尽力した人々の活躍を平易な言葉で描いています。随所に魯迅らのエピソードなども交えており、読み物としても楽しめる内容となっています。<BR> (2) 時代の方向性に強い影響を与えた数々の出来事、すなわち、太平天国の乱、変法自強、孫文や毛沢東らによる革命運動などにつき、「南の辺境から吹いた新時代の風」という言葉を用いたユニークな捉え方をしており、この見方を本書の縦糸としています。<BR> (3) 袁世凱の開発独裁志向のストロングマンという側面を紹介したり、孫文と国民党の専制体質を指摘したりと、政治的立場にとらわれない率直な解説がなされています。<BR> (4) 他方、この時代の社会的・経済的・文化的な状況については必ずしも力が入っているとは言えず、この点については些か物足りないものを感じる向きがあるかも知れません。<BR> さて、本書では、台湾出兵から日中戦争に至る日中関係の激動にも少なからぬ紙幅が割かれています。こうした部分を読むにつけても、「あの時に日本がこうしていれば」とか「何故あの時に日本はこうできなかったのだろう」などといろいろなことを考えさせられました。そうした思いも込めて、広く皆さんにおススメしたい一冊です。
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