村上春樹の「風の歌を聴け」、僕が高校生だったころに読んだ本だ。当時は何がなんだか分からずに、しかし引きずり込まれるように読んだ。<BR> こうして再び新装丁で出たので衝動的に買ってしまった。読めば読むほど深く、しかし、よく分かる。面白い。新人でこれだけ書ける人はやはり天才だと思う。芥川賞を取った「二人」なんて足元にも及ばないものがある。<BR> デレク・ハートフィールドという架空の作家を創り出すあたり、そしてそれを実在すると信じ込ませる力はやはりすごい。ハートフィールドの小説の内容の説明(もちろん村上さんの創作)がちょっと出てくるが、これは主人公である「僕」の求めていること、こう在りたいと思うことを投影しているように思えるのは僕だけだろうか?村上作品において「井戸」はコミットメントとの関係が深いという観点から見てという話だけど・・・。<BR> そして、「鼠」が書こうとしている小説は「風の歌を聴け」を書いている時点での、村上氏本人の小説のことのように思える。<BR> 奥が深く、何度でも読めるこの作品。ぜひお勧めです。
こういっちゃ言葉悪いですが、<BR>この小説に中身を求めちゃだめです。<BR>中身なんて全然なくて、<BR>スタイルだけで書かれたような作品です。<P>でも、というかだからこそ、<BR>村上春樹さん初期独特の<BR>軽やかな乾いた文体をもろに感じることができ、<BR>読後感はさっぱりと気持ち良い気分になれます。<BR>内容というより、文章やそのテンポに癒されます。<P>むつかしい文章に疲れたときなんかに、<BR>トイレで適当にページをめくり、<BR>何行かさらさらと読んでみるのに向いてる気がします。<P>ちなみに僕はもう7回くらい読んでます。<BR>けど飽きないです。<BR>無内容な小説も良いもんですよ。
この作品に出会ったのは予備校生のときで巷では村上氏の「ノルウェイの森」がベストセラーとなっていました。姉にもらったこの本はいまだに何かのおりに読み返してもう20回ぐらい読んだと思います。当時ちょうど主人公と同じ年頃で大学生への憧れもあいまって強烈に響いたと思うのですが、今も当時のままの思いで読むことができます。確かに他の村上作品にはもっとインパクトのあるものもたくさんあり好きな作品もたくさんあるけれど何故かこの作品は自分にとって別格のような気がします。デビュー作が一番好きだなどというと村上さんには申し訳ないけれど、いまや村上ワールドに入り込んでしまった自分にとってのプロローグがこの作品なのだと思います。かすかに心地よく流れてくる風の歌が本当に聴こえてくるようなそんな作品です。