科挙や宦官に代表される旧弊が残り、役人は賄賂にあけくれ、人民は貧困にあえぎ、列強から食い物にされかかっている大清帝国。その清朝末期から次の時代へを、幼なじみでありながら科挙と宦官に分かれ、そのトップにまで登りつめる文秀、春児という主人公を中心に、西太后とそれを取り巻く体制派、康有為らの改革派、そして列強のジャーナリスト等々の多種多彩にして魅惑的な登場人物をからませ、雄大なスケールで描いた小説です。もちろん、いつもの浅田作品に見られる感動場面に加え、歴史作品として、毒婦としての印象の強かった西太后像、日清戦争において李鴻章はなぜかくも簡単に敗れたのかといった面に新たな解釈も加えられています。また清末期から新しい時代を象徴する人物へのバトンタッチの描かれ方もさすが浅田次郎とうならされる筆致です。<BR>唯一残念であったのは、第1巻で非常に魅力的な人物として描かれていた文秀と春児の個性が第2巻以降、やや薄れたことでしょうか。それも大清の巨大さがなせる業でしょうか。<BR>ただ、そういった面を差引いても、4巻一挙に読み通してしまうだけの面白さを持った本です。
<BR> 浅田次郎に「鉄道員(ぽっぽや)」から入ったぼくは損をした。あの本を読んだのは何年前だったか、おかげでそれ以来浅田次郎という作家を完全に無視してきたのだが・・・。それが今回「蒼穹の昴」文庫版の書評を見かけ絶賛されているのを知り、買うまでもないだろうと図書館に行って借りて読み始めたらすぐさまハマっちゃいました。<P> この作家がよくよく指摘されるところの「お涙頂戴」的テイストが随所にあり、ちょっと素直に感動できなかったりもするのですが、そんなひねくれ者のぼくでもこれは傑作だと太鼓判おします。純粋に、面白いです。<BR> <BR> それまでのぼく同じく「浅田次郎?ちょっとね・・・」という人も、一度読んでみることを自信をもってお勧めします。
~本の内容については、みなさんにおまかせするとして、感想だけ。<BR>中国読みの漢字はなれるまで、とても読みにくかったですが、ページが変わるごとにふりがなを付けてくれているので、最初の方のページに指をはさんでおく必要とかはありませんでした。<BR>ストーリー自体は、とてもおもしろく一気に4巻読み終えてしまいました。<BR>中国の歴史的背景や、主人公の~~純粋さ。そして、どこまで史実通りなのかは知らないですが、実際にあったであろう、いわゆる宮廷内の悪者たちの真意。そういった内容を、文字の間に発見することの出来る素晴らしい本だと思いました。<BR>ただ生意気いうと、ちょっと仕上げがおおざっぱかな?って感じました。ストーリー内に矛盾まではないんですが、腑に落ちないというかすっきりしないという~~か、何らかの事情で執筆を無理矢理終わらせたというような印象を後半で持ってしまいます。ラストエンペラーとか、歴史的にこの本の続きになるものを読みたいと感じました。<BR>ともあれ、読んで後悔するような作品では絶対にないと思います。~