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仏教のこころ ( 五木 寛之 )

身にしみる。著者がからだで理解し感じた仏教の今を語る。二千年以上の歴史をもち、とりわけ日本というこの国で独自の光をはなった仏教を、現在の、どうひいき目に見ても「良い」とは言いにくい時代を生きる私たちはどう受けとめていったらよいのだろうか。そういう問題を考えるための、やさしい言葉がここにある。<BR>百時巡礼の経験がやはり大きかったのだろうなあ、と本書を読んでいて思った。仏教をある種の高邁な「哲学」と捉えて考察を深めるのではなく、あくまでも日々の生活におわれて「それどころではない」ふつうの人々の視点でつきつめようという姿勢が確固としているのである。全国各地の寺々に集い、目先の辛さや悩みをできるだけ少なくし、家族や友人の死後の安穏、ひいては自分の死に対する恐怖の削減をもたらしてくれる仏教に期待する人たちのイメージが、著者の文章の背後にすけてみえる。<BR>本当にやさしい、と思う。人にやさしい。自分の知らない苦しみのもとにある人と一緒に泣いている。固い言葉を使わせてもらえば、まさしく「慈悲」の生きた姿がそこにある。

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