蟲と呼ばれる、妖怪のような存在<BR>それを、封じる術をもった「蟲師 ギンコ」が主人公の短編が5編載っています。<BR> 山のヌシとなった年老いた蟲師のお話で、ギンコが「ムグラノリ」と言う術を使うシーンがとても迫力ありました。<BR> 登場人物がほとんど着物をきているのにみな現代風の髪型で、お話の不思議な雰囲気にとてもよくあっています。<BR> 特殊な物語なのですが、不思議と違和感がなく楽しませてくれる素敵なマンガです。<P> 一巻でも感じたのですが、この本の作者は<BR>「なにがあっても、絶対生きてくれ」<BR>とちゃんと、みんなにうったえています。<BR> そして、ギンコはそのための努力をしてくれます。<BR> 主人公はひねた風な風貌に描かれていますが、行動はまともで素直なので、とても暖かいお話です。
蟲師の世界は不思議な世界だ。「明治維新を経ない日本」らしい。人々はいまだに着物を着て、現代的な建物はないし、村や町というものが生活の舞台だ。しかし、主人公のギンコだけは洋服を着て、靴を履いている(他の蟲師とて着物を着て、世界に溶け込んでいる)。主人公なのに異物のように感じられる。「異邦人」とでも言うのだろうか?<P> 現実の人間の世界と非現実的な蟲の世界(非現実なのは人間で現実的なのが蟲だとすると、人間の危うさ、脆さが垣間見ることが出来る)が密接に重なり合う場において、ギンコはどちらにも属してはいないのだ。それゆえに「異邦人」的な存在として書かれているのではないだろうか?<BR>
独特の世界観が印象的な短編集です。<BR>その中でも、個人的に「綿胞子」が一番好きです。<BR>蟲である「綿吐の子」をギンコが殺そうとしたときの彼らの会話は心に強く残りました。<P>「どうしてころすの」<BR>「お前らがヒトの子を食うからだ」<BR>「ぼくらはわるくない」<BR>「俺らも悪かない<BR> だが、俺達の方が強い」<P>なんか、その会話に全てが在るような気がしました。