この人のマンガを見て思い出すのは、その昔ヤンマガの別冊に連載された「カタリベ」というマンガだ。もう内容はうろ覚えだが、確か瀬戸内海の倭寇かなんかをテーマにした作品だったと思う。もうその頃から絵も完成されてたし、ストーリーもまとまっていて結構良いんじゃないかと思って読んでいたのだが、当の別冊マガジンがアッサリと廃刊になってしまい、「カタリベ」自体も唐突に最終話を迎えるというあえない結果に終わってしまった。連載開始時のカラー表紙に(これから登場すると思われる)たくさんのキャラクターが書き込まれており、これらが全部無駄になるのかー、と思うと当時は少し残念な気分になったものだ。<P> その後いくつかの読み切りを描いていたと思うが、イブニングで今回「もやしもん」が連載され、再び目に触れることになったのである。話自体は菌が見える特異体質を持つ主人公が友人と農大に入って云々…、いった感じのキャンパスライフ物なのだが、相変わらず絵はしっかりしてるし内容も悪くない。それなりに読ませる出来だと思うが、やはりというかなんというか、かつて持っていた若さや青臭さ、といったある種の瞬発力が失われているように感じて仕方が無いのだ。もちろんそういったものが必ずしも作品に好影響をもたらすかといえばそれは別問題なのだが、
特殊能力を持つ者とその周囲の個性的なキャラクターたちをめぐるドタバタした出来事……が農大を舞台に描かれている漫画。<P> 各キャラの造型が面白い。ギャグ漫画としても普通に良いと思うが、農学関連や乳酸菌にまつわる薀蓄もとても興味深いものだ。個人的には、経験したことのない農大の風景などが新鮮に感じられて、憧れを抱かされてしまった(ホルヌッセンって何?)。<BR> しかしなんといっても、アニミスティックに描かれた菌たちの可愛らしいこと!<P> 発酵食品や自分チの汚い部屋がなぜだか、いとおしくなる。秋に出るという2巻が早くも待ち遠しい(巻末に収められている2巻の予告やオマケ漫画も相当に愉しいです)。お薦め。
ものすごいそっけないカバーで驚いた。<P>某農大を舞台に、農大内の特殊な学生生活をギャグ&デフォルメして描く、という「究極超人あ~る」や「ここはグリーンウッド」(たとえが古いでしょうか?)の農大版、という側面と菌を肉眼で見る事のできる主人公の視点から、日常に存在する菌の生態をやっぱりギャグ&デフォルメして描く細菌マンガの2つの側面が共存する作品。<BR>ほのぼのゆっくりとしているように見えるコマ運びの中でわりと死に至りかねない(菌関係の)大事件や大事故が未遂でくいとめられたりしていたりするのが特徴でしょうか。<P>連載時のトビラのタイトルや作品と絶妙な距離感(すこし踏み込み過ぎつつ客観的)をもつ柱のアオリや登場人物・細菌紹介もそのまま収録。「農大物語」というタイトルで始まったのにいつのまにか「もやしもん」になっていたその遍歴も確認できます。