このシリーズは論点が一冊の中で分散しすぎのきらいがある。他社の書籍に目をやれば、まだまだ純粋にいいものを作ろうという姿勢を感じられる本もある。考えてもみてほしい。このシリーズは全巻そろえていくらになるのか?そしてその結果が、果たして他社の3,4000円代の本に匹敵する資料性を期待できうるか。答えはあなた自身の経験則で出せるはずだ。ちょびちょびとかいつまんでつめこめば本が完成する。しかしそれで満足している方が果たしてどれほどいるのだろうか。
小林晋一郎氏は少年時代、マリンコングの顔貌がバラゴンと似ていると錯覚したとの談ですが、私はサラマンドラを不鮮明な白黒写真で知った時は頭部装飾の両端の段差付き同心円が眼と思い、ギララに通じる印象を受けたこともあります。かように多面的な魅力を湛えるギララの全容を妖光を放ちつつの球形化の連続写真、豪腕のアップ造型物、更にはAABγ号の写真と共に載せるのには編集者の読者同様の愛を感じ取りました。デッサン、原型、着包みを矢印付き・同サイズで紹介し最終段階で無機質さを弥増すアンテナ状触角の間の潜望鏡を思わす突起が誇張して付けられたと分からせ、舞台裏に想像を巡らせられるのには心憎いものがあり、本書で〔機電の魔術師〕こと、倉方茂男氏の業績を紹介するのも然りです。2頁ながら厳選写真の駆使でガッパ親子のキャラ性も作品テーマも伝える高密度記事.感服せしめました。アゴンの希少極まる全容写真からは外連味のないデザインにあってアボラスばりに裂けた口が個性を打ち出していると分かるのも多謝です。