作家が表現するものに、絶対的な客観性は存在しません。作り手が何を感じ、何を伝えたいのか、それが創作の大事な部分であり、すべてだと私は思います。<BR>だからこそ過剰な表現になってしまう場合もあり、多少偏った表現をしてしまう部分もあると思います。それは著名な方が記した専門書にさえ見受けられる事であり、この作品の欠点にはなりません。<BR>肝心なのは、読者が作品のテーマについて考える事だと思います。医療の現実を本当に詳しく知りたいのであれば、専門書を何冊も読むべきです(それも本によって偏りがありますが)。<BR>少なくとも私は、この作品を読んで非常に考えさせられました。それは専門的な知識が云々ではなく、ただ単純に、人から精神異常者と呼ばれている人達についてです。この作品の訴えたい事に否定的でも良いと思います。大事なのは、作品の訴えるテーマに対して考える事なのですから。
以前どこかにも書いたと思いますが、どうも精神科へ来てからの斉藤君は精神障害者をめぐる世間の目になすすべもないままに過ぎていっているようにみえます。それは、彼がぶつかっているものが今回は医療の現実ではなく、世の中そのものだからだと思います。これでは、誰だってブラックジャックに太刀打ちできません。ブラックジャックだって太刀打ちできないでしょう。<BR>それでも、少し斉藤君らしいところが現れたのがこの12巻精神科編④でした。あと1巻で精神科編は終わるらしいですが、どんな終わりを迎えるのでしょうか。
第11刊のレビューで私は<BR>「「精神科」と「マスコミ」という2つの大問題に作者は同時に手を出してしまっている。」<BR>と書きましたが、マスコミ問題は尻切れトンボの様に閉幕してしまいましたね。<BR>ちょっと残念。作者にはもぅちょっと粘って欲しかった。<P>この12巻を読んでの感想は、作者がちょっと”入れ込みすぎて”方向性を<BR>見失っていないかな。と思った。<BR>考えすぎというか、演出過剰というか(漫画だからある程度の演出は仕方無いとしても)。<P>そんなに精神系疾患の患者って普通 ~普通って何さ?~ の人から見ると、<BR>この漫画に書かれている通りコワイんですか? 世間のみなさん?!?<BR>私は定期的通院で、精神系疾患の患者さん達と席を同じにする事が<BR>ありますが、待っている間<BR>「となりに座っている患者さんが突然ナイフ振りかざして俺に襲いかかってくるかも。。。」<BR>とかなんて考えた事も無いです。フツーに本とか読んでますよ。<BR>むしろ「大人しい普通の子」や「よい子」が突然アンビリーヴァブルな<BR>殺傷犯罪を起こしたり、蛇頭やヤーさんが縄張り争いしている現在の日本、<BR>渋谷とか繁華街 ~つまり、一般人とか普通の人と”されている人”がたくさんいるところ~<BR>にいる方が、私はコワイんですけど。。。^^;<P>それとも、そういう事=つまり、いわゆる普通の人も精神系疾患患者も”同じ人間”である。<BR>って事が言いたくて、ここまで描いたのかなぁ?たしかにそれは作品の中で伊勢谷先生が<BR>何度も言っているけど。。。<BR>もし、そちらが作者の意志だとしたら、斉藤くんの爆走と演出でかえって<BR>わかりづらくなって、読み手に一番伝えたいモノが伝わりづらくなっている様に思います。<BR>・・・という事でいろいろ問題はありますが、<BR>何やかんや言いつつも前刊と同じ理由で、それなりに価値はある作品だと判断しましたので、<BR>この「精神科シリーズ」への評価という事で、星4つ。