統合失調症は一言では説明できない疾患であり、<BR>患者を抱える家族の不安は計り知れません。<BR>実は私もその家族という立場にあります。<BR>この本は、”統合失調症とは何か”をまず知りたい<BR>そう考えておられる方のニーズにあっていると思います。<BR>患者によって様々な症状のあらわれる統合失調症ですが、ここでは<BR>具体的な行動の例が簡潔に書かれています。<BR>患者の行動に疑問を感じ、それを理解したいと思っているかたには<BR>うなづける記述が多いと思います。<P>発病のメカニズム、予後につてと基本的なポイントを抑えつつ<BR>家族の接し方、リハビリについてなど実際に欲しい情報も読みやすく<BR>書かれていると思いました。<P>本文以外に、学校の授業でいうところの”雑談”的なコラム(もちろん、統合失調症に関わるお話です)が書かれていて、<BR>その内容も興味深かったです。<P>読んでいて、自分の引き出しが増える感じのする一冊でした。
精神病に対して、私たちの社会にはまだまだ先入観がある。体の病気と違って、心の病には「得体が知れない」という感覚がつきまとうからだろう。それは不安感につながるし、患者を排斥することにもなる。しかし統合失調症(以前は分裂病と呼ばれた)の罹患率は100人に1人と知って(それにしてもこの数字には驚くのだが)、もう特別視はやめたほうがいいと思うようになっていた。<BR> だから本屋の書棚に、心臓病や肝臓病などの本と並んで本書が置かれているのを見たときは、「ここまで日常的に扱われるようになった」ことに、感慨があった。表紙といい中のレイアウト処理といい、なんともカジュアルで、重苦しくない。本書が言うように、マイナスイメージをともなわせず、「克服すべき1つの病気として淡々と受け止める」という空気が伝わってくる。<BR> だからといって、内容が薄いわけではない。病気の原因、治療法などについて最新の臨床情報が盛り込まれ、解説も明快だ。精神疾患の本というと、どうしても難解な文章になりがちだが(精神科医というのは、わざと難しく書きたがるところがないか?)、本書にはその臭みがない。心の病を、いつも優しい視点で解き明かしてくれる春日武彦氏の監修というのも、うなずける。<BR> なかでも「抗精神病薬ガイド」は出色だ。類書の中で、抗精神病薬についてこれほど分かりやすく書かれているものはないだろう。薬の処方、注意点、副作用などの情報も豊富で、患者や家族にとっては必携といえる。<BR> 最後にある「根の深い社会的偏見は、患者の病気を悪化させる」結果を示した調査報告は、精神の病を持たない者にとっては、胸にひびくものだった。