フランスって移民が多いんですね。血統主義国ドイツと違い移民受け入れに寛容、国籍取得も難しくない国だと思っていましたがどうやらそうではないようで。この本では現状に苦しみ差別と闘う移民とその家族、支援団体員らの話をインタビューそのままの口語で載せています。そのために苦しみや辛さが生々しく伝わりますが、著者の見解が少ないのが不満。著者は子供時代をアフリカ、フィリピン、台湾など外国で過ごし、現在は日本で生活しているそうなので、自己の帰属に不安を抱く移民に何か感じるものがあったのではないでしょうか。そのあたりを知りたいと思いました。<P>初等教育に無償・義務・世俗化を導入して教育から宗教を排除した国です。国内ではカトリックにつぐ第2、第3の宗教、イスラム教とユダヤ教をどのように受け入れるかがこれからのフランスの課題でしょう。
新書にしてはかなり中身の詰まった本で、ややまとまっていないところもありますが、それを差し引いても十分読む価値があると思います。特にイスラム系移民の女性についての部分はとても考えさせられます。自由なフランスの中で、家族の中で奴隷のように扱われる娘たち、いまだにつづく処女信仰、さらに一夫多妻制における第2・第3夫人の立場など、「多文化の共存」ということを真剣に考えさせる本です。
少しでも外国で過ごされたことのある人なら、些細なことで悲しくなったり、心許なくなったり、むっとしてしまうことを経験されていると思います。はやく帰国命令でないかな、とか後数年頑張ったら日本に帰るぞ、と帰国を心の支えにして仕事したり、勉強したりされている人も多いでしょうし、あるいはもう嫌だ日本に帰る、と帰国した人も多いのではないでしょうか。<BR>帰る国のある人はいい。でももし、海外に滞在している間に母国に政変が起こり、帰れなくなったとしたら?<BR>誰もが、移民として生きていかなくてはいけない可能性があるのだと思います。<P>この本は人権の国フランスで生きる、様々な立場の移民たちにインタビューを試みた、画期的なものです。今までも同様の本はないではなかったと思いまち?が、新書で手軽に読むことができるのはとてもありがたいです。<P>読みながら、日本はフランスほどの規模で移民を迎えた時、フランスと同じくらいの保障を約束できるのかな?などと考えていましたが、途中で自分を「入れてあげる」側の人間と想定して読んでいた不遜さに気付き、今度は自分が移民になったらどうやって生きていくんだろう?と自問しつつ読了しました。ますます小さくなる世界で生きていく上での様々なことを考えさせてくれる良書と思います。<P>しかし他のレビュアーも仰っているように、私もこの本の翻訳には不満です。<BR>もっとも、移民のあまり堪能でないフランス語を表現するためにわざと悪文にされているのかもしれませんが。