言わずと知れた名盤揃いの1500番台に続いて、若干地味な4000番台を、1アルバム2ページ、えこひいきなし、というスタイルで語る本。<P>超・ド名盤であるアートブレイキーのモーニンから、商業的には大失敗の作品まで漏れなく網羅することで、苦しみながら、ポストハードバップのJAZZを生み出そうとしている、この時代のJAZZシーンを切り取ってきたような臨場感を感じさせます。<P>名盤の拾い聴きでは見えてこない、「時代」を聴くことができる一冊。
今月はヘソクリがあ大赤字、家人にはとても言えないのである。なぜか?この本のおかげである。この本を読んでしまったがために、これまで「古くさい」「音が辛気くさい」{オヤジ趣味っぽい」となんとなく積極的で無かったBN収集活動にはずみがつき、購入後の3週間ほどで40枚あまりの極秘購入を繰り広げてしまったからだ。<BR>この本はイケナイのである。ジャズ名盤本と言えばどこでも似たり寄ったりの有名盤をなぞるものばかりで、それだけを読んで「ジャズ聴き」になると、59年マイルスのKind of Blueとオーネットのデビュー以降ハードバップは一気にモードとフリーに変わり、新主流派で60年代を駆け抜けることになってしまう。ところがハービーやショーターが活躍する60年代中盤までの数年間に地味ながら素晴らしいジャズがあったことを一般のジャズ本は不必要に軽視しているようだ。<BR>ジミースミスはまだいいとしても、ドナルドバード、スタンリータレンタイン、デュークピアソン、ルードナルドソン、ソロモンイロリ、..........この本を読まなければ見向きもしなかったことだろう。そしてモーニンのブレーキーオトッツァンがこんなかっこいい音楽をやっていたとは!おみそれしやした!<BR>そしてホレス・パーラン!ワタクシがこの本で得た最大の収穫はこのへんてこなピアニスト!。なんとものを知らなかったことか。<BR>へたげにおすすめ名盤をチョイスすることなく、全ての4000番台を紹介しているところがこの本のミソであり、どうでもいい曲の解説でなく、背景のストーリーをひもとくスタイルが読み手の想像力を刺激する。ましてやエラソーな1500番台だけでなく、ややマイナーな400番台でこれをやってくれたことがスゴク価値のあることだと思うのだ。
著者のジャズ、特にブルーノートへの偏愛ぶりが伝わってくる。特にブルーノートの4000番台のアルバム一枚一枚の制作の経緯、ミュージシャンのエピソード、録音の様子など、当時の「熱かった」ブルーノートの製作現場が目の前に現れる。著者の博識ぶりにはとにかく驚かされる。前著では「ブルーノート以外にジャズはない」という調子だったが、この本はもう少し抑制的なのが、好感できる。自分の持っている4000番台のアルバムを聴きながら読むと、いっそう興味深い。(松本敏之)