ご存知、青春物の大傑作「ワセダ三畳青春記」の著者による冒険記です。要は、野々村荘なる三畳一間の下宿にて、通常人とは異なる非日常的な日常生活を送っていた間、本業ともいうべき、海外冒険において、著者がどんなことをしていたかが綴られた本になります。実際、読んでみても、中国やアフリカに野人、怪獣を追っかけにいったり、南米に麻薬を試しにいったり、インドで無一文で放っぽり出されたり等々、しかも、間一髪で命が助かったことも数知れず、やはり破天荒なものでした。しかし、著者の生来の明るさのせいか、こういうことも平然と受け入れて、また次なる冒険に旅立って行く所が、その昔に忘れかけていた元気を取り戻してくれる不思議な本です。青春物、とりわけ「ワセダ~」のファンにはお奨めの1冊です。
序盤、インドで身ぐるみはがされるシーンが印象的だ。ここで高野秀行という人の性質がちらりと見えるような気がする。<BR>パスポートなど所持品全てを奪われたあとの「一文無しというのはスカーンと晴れた青空のようなもので…」というシーンなのだが、ここで青空を比喩に持ってきたのがスゴイ。<BR>なにしろ場所はインド、ひとりぼっちで所持金ゼロ、もう少しで拉致されて殺されていたかもしれないのだ。普通の作家ならここで「一文無しとはまるで目の前に霧がたちこめたような状態だ…」とか「大きな壁に取り囲まれたような心境だった…」とか、なにかネガティブなものを持ち出して心情を表現するはず。<BR>なのに、高野秀行はここでスカーンと晴れた青空をもってきた。<P>この人は決してここで無理して気丈に振舞っていたわけじゃなく、思考の根っこの部分があっけらかんとしているんだと思う。<BR>ふつうの人間は、テロ多発地帯や伝染病のはびこるジャングルの存在を知ると、その危険さを考えて尻ごみする。自分に起こりうる最悪のケースを想像して恐怖する。面白い文章を書ける知的な人間ほど危険性を冷静に分析できるぶん、その傾向は強くなると思う。<P>でも高野秀行は違う。この人は知的でありながら、またこれから行く場所の危険さをよく知りながら「まあ多分どうにかなるだろう」と世界中どこでも行ってしまう。<BR>いわゆる平和ボケともちょっと違う。戦場みたいなところで命をおびやかされるような経験を繰り返してきても、次もどうにかなるだろうと自然に考えることができる、強烈におめでたい…じゃなくて楽天的かつ前向きな思考回路の持ち主が高野秀行だ。<BR>そんなところが、僕みたいに内向的で臆病な人間からしてみればとっても羨ましいのだ。
~大槻ケンヂの解説に「無茶しすぎ」とあるが、無茶とかそんな言葉では言い表せないくらい、ほんとめちゃくちゃ。<BR>そして笑える。<BR>世知辛い世の中(死語)に飽き飽きしてきている人にお勧めの一冊だと思う。<BR>彼の後書き、宮部みゆきとか、おーけんとか、著名な人が書いてるけれど、結構まじめなコメントが多い。<P>しかし、僕は声を大にして言いたい。<BR>「~~高野秀行の本は素直に馬鹿笑いできる日本で数少ない本だ」と。~