『海よ、巨大な怪物よ―オーパ、オーパ!! アラスカ篇』(1983年)と『扁舟にて―オーパ、オーパ!! カリフォルニア・カナダ篇』(1985年)を一冊にまとめて文庫化したもの。<BR> 前半のアラスカ篇はオヒョウ釣り。巨大な獲物を豪快に釣る。しかし、開高氏はどこか空しさを感じている。釣りの楽しさ、戦いの高揚感にのめり込んでいかない態度が文章の深みを増している。<BR> 後半のカリフォルニア・カナダ篇はブラックバスとチョウザメ。こちらの出来が悪い。釣りにおける虚無感とか悲壮感が乏しく、一気に冷めてしまった。釣り以外の観光部分が多いのも残念。普通の旅行記として読めば面白いのだが。<BR> 写真のレベルが高い。
タイトルにあるとおり、アラスカ篇とカナダ・カリフォルニア篇。2部構成と考えた方が良い作品です。<BR> ベーリング海の孤島セント・ジョージにて、大自然の猛威に挑みながら野獣オヒョウを吊り上げるまでの格闘と、自然の厳しさ、孤島に住む島民の刹那さをダイレクトに表現している。<BR> 「釣ってこんなに大変なんだ。よくもまぁそこまでやるよ。」<BR>と感心してしまうばかり。<P> 後半は実際の体験がアラスカに比べるとのんびりとしたものだったこともあり、ダラダラと間延びした感じになってしまう。<BR>実際の現場を想定させてくれる書き方といえば、そうなのだが、前編が荒々しかったため、少々物足りない。<BR> しかし、そんな中にも著者らしい表現が織り交ぜられており、カリフォルニアの雄大さが感じ取れる。<BR>「ナパに行ってみたい」<BR>と思ってしまった。<P> 前半だけでこの本は満足。開高健好きでなければ読破できないかも。
「オーパ!」がアマゾンの釣行記であったのに対し、これはアラスカ編、カリフォルニア・カナダ編と銘打たれている。しかし、釣行記として面白いのはアラスカでのオヒョウ釣りの方だけであって、後半はだんだんだれてくる。釣りが主体ではなくなり、ふつうの旅行記に近づいてしまったせいだろう。文章の密度は明らかに低下している。また、食べ物の話が多くなり、グルメではない私としては、内容自体どうでもよくなった。<P>それにしても、彼の文体は相変わらず男のそれで、強靱そのもの。但し、あちこちからしみ出た体液を拭わない野性の名文であるから、読む側にも体力がないと辟易してしまう。私にとって本書の後半は、心身ともに最低の状況下で読んだものだから、よけい消化不良になった。腰を据えて読めばもう少し面白いのかもしれない。