手塚治虫さんの作品である鉄腕アトムは大変大きなアニメです。そんなアニメを原作に使うとなると必然とその世界、絵柄などを壊さないように気を使って自分の描く世界をうまく作れないでしょう。しかしこの作品は違います。この作品には手塚ワールドではなく、浦沢ワールドが確かに存在します。浦沢さんの持つあの独特の雰囲気が失われていない。手塚治虫という名前に押しつぶされず、むしろいい具合に調和できている。早く続きが読みたいです。
田鷲警部、お茶の水博士が登場し、鉄腕アトムのキャストが次々と顔を見せてくれます。田鷲警部は口髭を生やしていますが、かなりダンディで、お茶の水博士の鼻もちょっと大きいくらいでしょうか。人間っぽくなってます。表紙の絵を見ての通りアトムもこんな感じですが、重々しいストーリー進行には唸らせられます。ふーっと息をついてしまうようなヘビーな作りでした。そこへかわいい女の子が登場して、あっウランだ、と思ったところで2巻目が終わりでした。この演出もなかなかのものです。アトムファンのかたにはお勧めです。
アトムやウランも登場して、いよいよ佳境に入る第2弾!あの傑作「MONSTER」を読み続けた時も感じた事だが、浦沢直樹って、本当に稀代のストーリー・テラーだと思う。今作でも、各エピソードにはりめぐらされた“サスペンス”、“伏線”、“抒情性”、“余韻”の絶妙さには、ほとほと感心させられる。中でも、ロボットたちが見せる、人間よりも人間らしい、感情の痛切さと言ったら、、、。ゲジヒトの記憶チップを読み取った後、ひとり“涙する”アトムの姿や、ブランドの最期の送信データの“乱れた画像“に、思わず涙してしまうは、ボクだけではない筈だ。一応架空の国名とはなっているが、誰もが連想出来る「大国」の陰も見えてきたし、益々次回への期待が膨らんできた。手塚治虫の前作でも、最も博愛的で愛すべきキャラクターであり、今作でも魅力的な存在となるであろう、まだ見ぬエプシロンのパートを一刻も早く読みたい衝動を抑え、このクオリティを持続させる為、じっくり執筆して欲しいものだ。