この「逆説の日本史」シリーズは愛読しているが、面白い反面、さすがに5巻くらいになってくると、飽きてくる。著者の強い主張に「お腹いっぱい」になってくる。<BR>私は最初のうちは新鮮みを感じて「その通りだ」とうなずきながら読み進めた。しかし、だんだん「また、これか」と思い始めてくる。<BR>“一般の学者が見落としているのは言霊思想であり、日本史における宗教的要素である”“こういう言い方をすると、マルクス主義史観に懲りかたまった学者は……”“右の学者は……”と、とにかく他をなで切りにするのである。<BR>著者は、このシリーズの中で繰り返し「日本の思想は和にあり」と強調しているだけに、自分のように、どうしても「和」を重んじたくなる人間には「またか」と思ってしまう。<BR>全シリーズのうち2冊くらいをピックアップして読むか、あるいは、2冊くらい読んだら、何年か時間を空けて読むとか。そうでもしないと読むのに疲れてしまうと感じる人もいるでしょう。<P>この巻では今、大河ドラマで注目されている源義経の歴史的な存在意義。なぜ義経は頼朝に滅ぼされたのか。なぜ、あれほどの戦争の天才が亡んだのか。こういったところが面白かった。そのあたりの著者の見方は、今の社会で我々が生き抜くに当たっても、必要な視点を与えてくれると思う。
「逆説の日本史」シリーズは毎回楽しく歴史教科書に無い視点で<BR>日本史をエキサイティングに読ませてくれます。検証や推察も<BR>科学的&論理的態度を貫いているのでクビを傾げずに読みつづけることができます。<BR>この第五巻では義経が頼朝の怒りを買ってしまった理由や、<BR>後鳥羽上皇と鎌倉幕府の闘いであった承久の乱が、実質的には<P>公家対武家と言う明確な階級闘争であったことを明快に<BR>解きほぐしています。<P>こういう歴史教育のエッセンスが高等教育で行われていたらなぁ、<BR>なんて過去に思いを向けてしまったりします。<BR>自分が予備校講師に戻ることがあったら使おうっと。
権威主義、史料至上主義、呪術観の無視という従来の日本学界の常識を再検討し、日本史に新たな視点を提供する「逆説の日本史」シリーズの第5弾。本書でも著者のオリジナリティあふれる学説をもとに、明快に日本史を紐解いている。<P> 天皇・上皇が絶対的権威でありながらも、源頼朝を委員長、北条時政を書記長にした労働組合のような形をとることで武士が実質的な支配権を握っていったという例えは大変興味深い。しかし、その後に北条氏がただの有力御家人で終わらず、執権という役職のもとに権力を集中できたのは北条時政・義時が稀代の謀略家だったからとしているが、それにはいささか物足りない印象を受ける。さらにもう一歩踏み込んで、御家人組合の書記長に過ぎなかった北条氏がどのようにして他の有力御家人を押さえて、象徴将軍のもとに政権を握ったのかを著者に解説して欲しかったところだ。