星野道夫さんの目を通して見たものと同じものを写真で見せてもらっている。<BR>それだけで胸がしめつけられる思いがする。<BR>これだけ本質を見抜き、やさしい言葉と写真で語る写真家はいただろうか。圧倒するだけではない。<BR>ただ自然の摂理にそっと寄り添うことで聞こえてくる確かな真実。<P>彼の撮った写真、書いた文章を数冊読んでいて出会った絵本。<BR>急逝した年のはじめに出版されている。<BR>時期を予期していたかのようにさえ感じてしまう……<BR>いのちのために、彼自身がいのちを落とすことを。<BR>それはまた永遠に繰り返す新しいいのちのつながりを示しているのだと信じる。
何が足りなかったのか。<BR>やっとわかってきた。<BR>それは、毎日、毎食、食べているものたちに対する「ごめんなさい！」「ありがとう！」だ。それが「祈り」なんだ。<P>全ての生物は、他を殺さなければ生きていけない。人間も例外ではない。動物や植物を殺し、それを食べなければ生きていけないのだ。<BR>文明の進んだ人間だけは、その当たり前のこと・・・生物が一番忘れてはいけないことを、忘れてしまった。<BR>だから、当然、狂った。<P>これまで、私のために死んだものたち。これから死なねばならないものたち。<BR>膨大な数のそれらは、再び、私の中で生きる。<BR>「祈り」を忘れない。
ナヌークとは、白熊のことで、白熊は狩人の少年に話しかける。「クジラはサケをのみこみ、サケはニシンをのみこみ…命をつなぐ。」「どちらが死んでもかまわない。」「人間は言葉を失った。いのりがナヌークに話しかける言葉だ。」本の内容は、だいたいそんなところだ。実にあっさりと読める。<BR>ところが、読んでいるうちにじわりと心臓に突き刺さるものがあった。昨日食べた牛肉が、数日前まで生きていたことに、今まで一度も気がつかなかったことに、気づいたからだ。私はその肉のおかげで生きている。命をつなぐ分には牛が死ぬのはしかたのないことだ。しかし、感謝を忘れてはならない。こんな大切なことをなぜ、今まで気がつかなかったのかと、動揺した。子供にこの大切なことを伝えたい。そう思って、何度も読み聞かせている。<BR>
