「春の雪」にはまってしまい、先日購入しました。<BR> 前作はすいすいと読めたのですが、この本はやや難解。<BR> 神風連に関する知識が全くなかったせいもあり、読み進めるのにかなり手こずりました。<P> でもそれでも先が読みたくなる展開は、さすが三島由紀夫!!<BR> 「わかんない、けど先が知りたい」の一念で読めました。<BR> 日本語が本当に美しいです。<BR> 勲の心理描写がとても巧みで、読者を三島ワールドへ引きずりこんでくれます。<BR> 気が付けば彼に共感してしまう…本当にすばらしい才能の持ち主ですね。<BR> 槙子の描写も感嘆してしまいます。<BR> 「美しい」と言ってしまえば簡単なのに、繊細な筆遣いで飾られた彼女の容姿を想像すると<BR>聡子にも負けず劣らずの美貌の持ち主が目の前に現れます。<BR> 言葉をとても飾っているのに、不必要なものが一つも見当たらない。<BR> それが三島作品の最大の魅力だと思います。<BR> 「豊饒の海」シリーズは特にそれが感じられるものたちではないでしょうか?
豊饒の海四部作の二作目。<P> 「春の雪」とは打って変わって若者の激しい力を描いた作品。物語も動きが激しいため非常に読みやすく、スラスラと読むことができた。「義」のためならば命をも惜しまないという勲の考えには、今の時代には無い熱さを見たような気がする。周りにいる大人たちの狡さにも負けず、己の意志を通そうとする勲には松枝清顕には無かった力強さを感じた。単品としてみても十分に面白かった。
この作品は、読者から「羨望」を引き出すのですね。大義のために命を賭す主人公を描くことで、読者に強烈な批判をするんです。三島由紀夫が市谷駐屯地で読んだ檄文そのまんま。「生命尊重のみで魂は死んでもよいのか!」という強烈な批判です。読者は主人公の純粋な思想・行動を「カッコよく」思うと同時に、自己のカッコ悪さも同時に抱くのです。