心のなかをひた走りに走ってきた末に行き着いたところは。。。作者の人生の集大成ともいえる作品です。弁護士本間が目にした寺の庭。描写が哀しいほど美しいです。一面になりひびいていたものは。。。禅の世界??卓抜した視点、観察眼と美しい文章は天才以外の何者でもありません。高い美意識と日本語という言語への愛、こだわりを感じます。英語版と読み比べるのも楽しいです。
豊饒の海四部作の最終巻。<BR> この巻で物語りは決定的な破局を迎える。今まで転生者を見つけてきた本多だが、今回は「偽りの転生者」と出会ってしまう。財産、名誉全てを失いかける本多。この危機は友人の機知のため回避するも、そのことをめぐりその友人との友情を失ってしまう。<P> 傷つき疲れ果てた彼は聡子に出会いこの物語は全て崩壊する。「輪廻転生」今までのことは全て幻だったのか・・・
本書のラストを取り上げ、アイリス・マードック(イギリスの哲学者・小説家)が哲学書の中でそう形容したのでした。<P>人間は「意味」を求めて物語を紡ぎ出す。しかし宗教は「物語」の向こうにある。「意味」への飽くなき希求が尽きたところから真の宗教が始まる。<BR>『天人五衰』のラスト、「物語=意味」が解体する。三島は「宗教」の領域へ渡ったのだと思う。<P>アラの多い四部作で、その欠点をあげつらうのはラクです。ただ本書の<BR>ラストに辿り着いた時の静謐な感動は---それを「文学的感動」というならば、確かにそうなのだと思います。