本作は春夏秋冬、四季にあわせて4章に分けられている。しかし、どの季節でもしをんはしをん。怒涛と押し寄せるへんてこな妄想群とコアな内容には衰えがない。<BR>しをんという作家のフィルターにかかると、平素な日常の一コマもおもしろくておかしな事件となる。<BR>かなりサブカルチャーな匂いも漂わせるが、それはそれで楽しめる。<BR>文庫のために書き下ろされたあとがきもも名前に違わずエッセイ風で、ちょっと得した気分になれる。
「抱腹微苦笑」という惹句がぴったりの、多幸感あふれるエッセイ。<P> 入学式に臨む弟のためにスーツを買ってあげるようなイイお姉ちゃん振りを発揮したり、ふと覗き見たフランス料理屋の厨房内部の、ホモセクシュアルな人間模様を妄想してみたり、京都を歩きながら友人たちと「盆栽」をモチーフにした戦隊モノ(ボンサイダー!)の設定作りに興じているうちに……結局BLに落ち着いたり。<BR> 「ギャルソンの服で欲しいのあんだけど買えねーわー」とか、飽くことのない漫画の話とか。<P> 狂っているようでいて、その実あまりにも健全な人生劇場。<BR> 今や直木賞にノミネートされるまでになった著者の、ブレイク前夜の雰囲気が良いです(ブレイクしても変わらないといえば変わらないのですが、この人の場合)。<BR>