ユリウス・カエサル ルビコン以前(中)ローマ人の物語9 みんなこんな本を読んできた ユリウス・カエサル ルビコン以前(中)ローマ人の物語9
 
 
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ユリウス・カエサル ルビコン以前(中)ローマ人の物語9 ( 塩野 七生 )

借金漬けのプレイボーイだったカエサルが、本巻と次の巻では、政治的にも軍事的にその才能を遺憾なく発揮してきます。<P>華麗なる戦勝歴を背景に民衆の人気絶大なポンペイウス、ローマ一の金持ちで経済界代表のクラッススと結び「三頭政治」をはじめ権力基盤を強化したのち、軍事的な名声を高めるために、未だローマの覇権が及んでいなかった、ガリアの地の制圧に乗り出す。<P>ガリア人諸部族やゲルマン人との闘争、ライン川渡河、ブリタニア侵攻、ローマ国内でカエサルの政治基盤を脅かす「元老院派」との対決等々、戦略性・カリスマ性・政治力・コミュニケーション力 全てにずば抜けて優れていたカエサルの才能が余すところなく発揮されます。<P>圧倒的な兵力数の少なさ、敵地での戦闘という悪条件、同盟したガリア人の裏切り等々 さまざまな逆境をものともせずに、むしろそれを楽しんでいるようにも見えるカエサルは、本当に「かっこいい」の一言につきます。<P>大迫力のガリア戦記。これは読まないと損ですよ。

本巻でようやくカエサルが本領を発揮することになります。執政官への就任、クラッスス、ポンペイウスとの三頭政治、そしてガリア戦記です。本巻からは著者のカエサルに対する愛情がひしひしと伝わってくるので、読んでいるこちらが微笑を浮かべてしまいます。しかしそれを抜きにしても、カエサルが政治家として、軍事家として、そして間違いなくお金の面でも類い希なる才能を持っていたことがわかります。<P>本書を通じて確かにあらゆる面で頭の良さを感じます。ある時は意識的に、ある時は無意識なのでしょうが、とにかく物事を良い方向に進める才能に長けています。良いというのは自分だけでなく社会にとってもという意味であって、著者が指摘しているようにカエサル自身の私利をローマ社会の公益につなげ行動しているという、いわゆるWin-Win戦略を基本としています。<P>本巻ではガリア戦記の一部としてカエサルのブリタニア(イギリス)上陸が記されていますが、まさかその島が後の世界の中心になるなどとは、さすがのカエサルも予想していなかったことでしょう。ただオリエント重視の世の中で、誰も眼をつけていなかったブリタニアに侵攻したカエサルの視野の広さには驚かされるばかりです。

 資質では立派であったカエサルが、いよいよ政界入りへと目指す第一歩の展開に、必ずや読者はその桁外れの度量と気概、優しさにうっとりするはず。並みいる政敵を論破してゆく姿に驚かされ、結果ガリア遠征へと出かけて行くカエサルの心意気が素晴らしい。<BR> ローマ独特の敵を懐柔して属州化する手段は、現在の日本の政治家にも学んで欲しいところである。カエサルの人間を動かす術は、青年期での遊びが実を結んだのだろう。『遊んだもの勝ち』とはこれいかに。<BR> 残念なのは、書店店頭でで本書と『ガリア戦記』、『内乱記』が並んで陳列されていないこと。今までどこの本屋でも見かけない。凡人よりも数歩先行くカエサルのセンスに、書店員はついて来れないのだ。

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