この本は本当に色々な読み方が出来る。ローマ歴史の入門書として読む歴史好きの人もいるだろうし リーダーのあり方を読む経営者もいるだろうし、ローマを舞台にした叙事文学を読み取る文学好きもいるかもしれない。但し 小生が一番感じるのは これは確信に満ちた独断だが 著者塩野七生のカエサルに対する熱烈なラブレターである。当代随一のクールで洒落た文章家の彼女にしても 熱情が時として溢れ出すことを止められない部分が散見される。そんな意味で これは 著者が主人公を愛しているという 時代を超えた片思いを描く 純愛文学です。<BR>これほど 色々な読み方が出来る本は知らない。万人受けする一方、これは自分の為に書かれた本ではないかと思わせる。一読を勧めます。
ガリア完全攻略を果たしたカエサルが、かつての3頭政治の盟友であり、娘の夫でもあったポンペイウスとの対決のためルビコン川を越えて、決戦に挑みます。<P>対決のクライマックス・ファルサルスの戦いでは、ガリアの頃から相変わらず、圧倒的な不利な状況を逆転し鮮やかに勝利する戦略が見事です。かっこよすぎです。カエサル。<P>そして、敗者を赦し、いかなる罰も与えず、自らの側に取り込んでいくローマ伝統の精神を、カエサルは見事に体現しています。そんなカエサルがアレクサンドリアでのポンペイウス暗殺を聞いたときの心境はどうだったのでしょうか。<P>野心と虚栄心と才能あるものを見出し愛した、軍事と政治と愛(?)の天才・カエサルの魅力を堪能しましょう。
「専門家」がなにを意味するのか今一不明ですが、塩野氏の創作態度は<BR>前書きや後書きと参考文献のリストをみるだけで分かります。<BR>特に、「ガリア戦記」以外にほとんど文献のないカエサルのガリア制覇は、原資料をなめるように読み込んだというだけでなく、それをおのれのものとして熟成し(資料の声を聞くと表現されている)日本人としての視点を加味して書かれています。<BR>「ガリア戦記」は近山金次氏訳のものと読み比べてみましたが、端折った点はあっても、故意に史実をまげたところは見あたりませんでした。<BR>むしろ、いかにも旧式のもってまわった訳よりうんと読みやすく、ローマ人の所行が生き生きと描写されている名著とおもいます。