本書はアウグストゥスによるパクス・ロマーナ建設過程をわかりやすく解説した本です。そのため終盤にゲルマン遠征という戦争も若干記載されていますが、全体的にはアウグストゥスによる制度改革がメインとなります。<BR>トピックは地味ですが、著者のわかりやすい解説のおかげで、税制改革や軍政改革、行政改革など全てについてアウグストゥスの意図が見えてきます(もちろん別の解釈も出来るでしょうが)。全体を通じて感じたことは、アウグストゥスの政策は、何かを禁止するようなものではなく、いわゆる「誘導型」と呼ばれる、人々にインセンティブを与えて動かすものが多いですが、なかなかうまくできていると思います。<BR>この時代にローマに生きていた人々はローマ市民としての誇りや、ローマによる平和を大いに享受していた感があって、私自身もタイムマシンがあったら行ってみたい時代です。
カエサルが為し得なかった改革を、若い頃に後継者に指名され長寿に恵まれたアウグストゥスが実現していきます。<P>改革にとって、一貫した政策と着実な実行というものがいかに大切かが分かります。親の代では抵抗が大きかった改革が子の代では問題なく受け入れられる。そうした時代の空気を作っていくことが、カエサルと違い、時間を味方につけたアウグストゥスが為し得たことなのではないでしょうか。<P>現代の政治家(アメリカでも日本でも)は、このような時間は許されていないことから、なかなか本質的で抜本的な改革はやりづらいと思います。批判されることも多い帝政ですが、無私で賢明な君主がそれを行う場合には他の政治形態よりも社会にとって有益なこともあると思わせます。(無能な人の独裁となると最悪ですが)<P>軍事力と予算の関係の適正化など、アウグストゥスが為した地味ですが重要な改革の数々。そして慎重の上に慎重を重ねる実現過程。その上に、パクス・ロマーナは実現できたということが実感できます。
日本史なら司馬遼太郎。<BR>そして世界史に触れたい、とりわけローマ帝国史なら塩野七生が一番だろう。<BR>読めば現在にも通じるものがあると分かるはずである。<BR>最近、どんどん文庫化されていて、内容も良いのに、この安さ!<BR>お買い得だ!買わない手はない。<BR>ローマがローマ帝国になっていく過程から始まったシリーズも今回で15巻目。<BR>さらに、文庫化されていくことに期待である。