ローマの歴史も 久しぶりに 大混乱の時期を迎える。一年間に皇帝が3名も変るというのもたいした話。塩野七生自身が 久しぶりのローマの混乱を 幾分苦笑しながらも 何となく楽しんでいるかのような書きぶりである。<P> 但し、これが大事なのだと思うのだが、それでも結果的にローマ帝国はその巨大な版図を維持していったという歴史の事実の重さも大したものである。カエサルが構想し アウグストゥスが構築し ティベリウスが 徹底した ローマ帝国の骨太な構造の強さ。それに いかに塩野七生が感動しているかも 彼女の闊達な文から滲み出てきている。また 組織を考える際にも大変勉強になる。我々サラリーマンが日々直面している問題でもあるのだ。誠に 人間のやることは変わりない。<P> それにしてもローマ帝国は2000年後に 塩野七生というカリスマ的な語り部が登場したことに感謝すべきである。彼女がいなかったら 我々はローマ帝国なぞは 一部の歪曲された映画で見る程度だったと思う。こんな面白い歴史を知らずに終わったら 本当に勿体無かった。
神帝アウグストゥスの最後の後継者であったネロが死んだあと、帝政ローマは迷妄の袋小路に叩き落されます。血縁者が皇帝を受け継ぐというシステムの破綻。ではどのような人物が皇帝たる存在にふさわしいのか。はたまた帝政という政体に限界が見えてきたのか。さまざまな難問を抱える中で1年のうちに皇帝が3人も入れ替わるという異常事態が発生します。進むべき方向性を見失ったとき、好むと好まざるとにかかわらず、ローマ人たちは内乱への道へ到るしか方途はなかったのか。塩野七生は冷静な視線でターニングポイントを列挙しながら、狂った歯車の回転を綴っていきます。性善説、性悪説どちらが正しいのか分かりませんが、本編の終盤、希望の光がうかがえます。人間はただ愚かなだけではないのです。
皇帝ネロの治世末期、各地のローマ軍団が叛旗を翻し、絶望したネロが死を選んだ後から始まる本書は、約30年、8人の皇帝の治世を描く、<BR>五賢帝時代の歴史家タキトゥスをして、「ローマ帝国最後の年になってもおかしくなかった」という西暦69年、内乱で3人の皇帝が次々と立っては死んでいく。後を継いだのは地方出身のヴェスパシアヌスだった・・・。<BR>カリギュラ、ネロといった悪帝の時代と、五賢帝時代の狭間にあたる時代を描いており、前後と比較するとややマイナーな時代を描いた本作は、知られていないだけに逆に新鮮に感じられた。次々とめまぐるしく皇帝が変わっていく様も、中国や日本の歴史にはない様相があり、これもまた読み応えがある。<BR>いつものように作品中には歴史から読み取られた著者独特の示唆に富んだ文章が散りばめられ、詠んだだけで一家言持った気分になる。