タイトルは海馬ですが、海馬そのものに関するハードウェア的な解説はほとんどありません。<BR>内容のほとんどは、脳のソフトウェアとしての機能の解説に費やされています。<BR>それがいろいろな面から語られるのですが、どれもこれも思い当たる節のあるような話ばかりです。<BR>まさにこの思い当たるというような、あるインプットに対して別の事柄を関連付けるというのが、脳の脳たる所以なわけですが・・・<BR>ということで、自分の脳をどうやって使っていこうかという面で、非常に参考になる一冊です。
あまり難しく考えないで、軽い読み物として時間が空いたときにお手軽に読むのに適しています。<BR> 海馬についての働き・活用方法については新鮮なものからどこかで聞いたことがあるなあというものまで色々ありますが、近頃物忘れが激しく落ち込んでいる身には、嬉しいものがあります。<BR> 学問的に突っ込んでいる訳ではないので、すいすい飽きずに読み進められます。文庫化に際して、単行本が出てからの二人の生活の変化などが追加対談として収録されていて、これを読んだらいいことあるかもと思わせてくれてお得な気分です。
この本ですっかり池谷ワールドに魅せられました。他の池谷先生の大脳生理学に関する本(「記憶力を強くする」「進化しすぎた脳」)を読みましたが、それらの本に入る前に、この文庫本で軽くウォーミングアップしておくといいかもしれません。対談集なので気楽に読めますし、章ごとに簡潔なまとめが付いているので、あとで「復習」するのに役に立ちます。池谷先生の「あとがき」も良い総括です。なお文庫本には単行本発刊以後に収録された追加対談(約23頁)が収録されています。<P>「つながりの発見」という言葉がこの本の一つのキーワードです。その言葉に触れて、「アイディアとは新しい場所におかれた古いアイディアなんだ」(「仕事は楽しいかね?」(デイル ドーテン著))という言葉を思い出しました。つまり「ひょっとしてアレがコレに使えるんじゃ!?」というような「組み合わせの妙」を探る力がある人が「頭が良い」わけです。従来の考え方(=common knowledge、conventional wisdom)に慣れるだけでなく、必要な時にそれを疑い、知識の再構成(=creation)を出来る人が「頭が良い」わけですね。そんな知識の再構成が、寝ている間に脳の中で起こっていると思うだけで、なんだか嬉しくなってきます。そんな睡眠の重要性をこの本で知りました。(アイディアを思いつき易いのは『三上(さんじょう)ー馬上、枕上、厠上』である、という言葉を「思考の整理学」(外山 滋比古)で知りましたが、今これを大脳生理学的に理解することが出来ました。(^-^))<P>この本の対談も、いわば「組み合わせの妙」だと思います:言葉の意外な組み合わせ(=キャッチコピー)の効果を追求し続けたコピーライター、かたや、脳の神経細胞の繋がり方(ネットワーク)とその機能発現の仕組みを追究する実験科学者。そんな二人の言葉のキャッチボールは、ある時はストレートに、ある時は意外性に富んだ変化球と、読んでいて十分刺激的ですし、「自分もまだまだやれるかも!」とワクワクしてきますょ。(そんな名言がちりばめられています)