二人の男の子を産み、一度も外で働いたことのなかった専業主婦が一年も経たない内に学校の先生となり、やがてカリスマと呼ばれるようになった・・・<P>無気力で人の言う事を聞かない子供たちがどのように変わっていったのか。一見するとこの「ほめて伸ばす」太田恵美子先生のやり方を「甘い」と取る向きもあろう。だが、本当は厳しい教育だ。誰もが「知らず知らず」のうちに自己の才能の限界に挑戦してゆき、やがて自分の周囲と世界を今までと違った目で見てゆく術を獲得してゆく。子供たちの目が輝いてゆくのは当然だ。<P>「学校では無気力教師の授業を居眠り半分に聞いていればいい」という態度の生徒とその親から見ればトンデモナイ教師だ! 太田先生と同じ職員室にいた無気力教師・イエスマン上司だけが目を輝かせなかったという現実がかえって際立った。<P>これは単なる教育論の本ではない。現代日本の深層をえぐる本でもあるし、大人対子供に限定せず人と人との関係一般をも考えさせる本だ。そういう意味で教育に興味を持つ人だけでなく、かつて生徒だった全ての大人たちに読んで欲しい良書である。
太田先生の誠実なご努力と地道な実践に胸をうたれました。教師だったころ、生徒の私語が絶えず非常に悩みました。もっと早くこの本に出会っていればよかったと思います。子供たちをよく見ること、よく言い聞かせること、人生に目的をもてるような教育をすること――言うは易し行うは難しとはまさにこのことです。教育の基本ともいうべきこれらの事柄を大田先生が具体的にどのように実践してきたかが分かる本です。固定観念から子供を解き放つ授業の記録に、目からうろこが落ちる思いでした。大田先生は現在、栃木市に招かれて教育に携わっていかれるとのこと、栃木の教育委員会に敬意を表したいです。
この小さな文庫本にあれだけの教育技術がぎっしりと詰まっているのには驚きです。500円で1円のおつりがくるのも粋ですね。