法隆寺最後の宮大工西岡常一とその弟子小川三夫、そしてそのお弟子さんたちのことばを伝えたのが本書。<BR>えてして説教臭くなるところをぐっと抑えて、若い人たちへのメッセージにしたところが好感が持てると思います。<BR>単なる技術論ではなく、長い経験に裏打ちされた職人論・自然論・教育論になっていると思います。
著者が3名になっているのは、西岡さんが明治生まれの法隆寺の宮大工、小川さんがその直弟子さん、塩野さんがその話を聞き書きしてまとめた方。<P>また、天・地・人と3部構成になっているが、「天」が西岡さんの話、「地」がそのお弟子さんの小川さんの話、そして「人」は、現在、小川さんがまとめいらっしゃる、鵤工舎(いかるがこうしゃ)という宮大工集団の工人の方々の話が、いずれも聞き書きという形式で収録されている。<P>宮大工という生業の人々が何を思い、どのように仕事を行い、また継承してきたのか、ご本人の話し言葉で語られている。こういった口語体で書かれた文章にありがちな、方言についての違和感は私は感じなかった。(ちなみに私は大阪出身)<P>対象年齢は小学校高学年以上程度。
法隆寺大工の口伝<P>「神仏をあがめずして社頭伽藍を口にすべからず」<P>「木は生育の方位のままに使え」<P>「堂塔の木組みは寸法で組まず木の癖で組め」<P>「木の癖組みは工人たちの心組み」<P>「百論をひとつに止めるの器量なき者は謹み懼れて匠長の座を去れ」<P>1300年も口伝で伝わって来た言葉の重み。<BR>ゆっくりとしっかりと受け継がれてきた伝統。<P>話し言葉で書かれていて、しかも無駄がない聞き書きは芸術だ。<BR>シンプルでしかも心に響いてくる。<P>僕の中に眠っていたDNAの記憶に訴えかけている何かを感じる。<P>そして、鵤工舎の徒弟制度のやり方を知ってびっくり。<BR>教えるのではなく、生活をすることで伝わる技術。<P>この本には人が人であるために大事な鍵があると確信した。<P>今も心に響いた余韻がありつづけている。<BR>久々に魂がふるえる本に出会ってしまった!