数学者として1人の男として、様々な角度からまとめたエッセイ集です。非常に短い短編なので、あっと言う間に読めて、しかも吹き出してしまうほどの面白さも備わっています。特に、日常を舞台にした妻とのやりとりは必見です。
表現美もさることながら感受性も豊かであっという間に読み終えてしまった。<P>また子供の育児と正しい教育のあり方を武士道精神とからめてみたり、人としての個性と貫徹する意志の強さに驚嘆した。<P>ホームコメディさながらのエッセイで全体をバランスよく保ち名エッセイストの名を堂々たるものにした著者の風格を感じる作品であった。
ご存知、藤原正彦氏のエッセイ集。タイトルにある「父の威厳」は、ご本人であるとともに父、新田次郎氏をも指していると考えられる。御尊父との銀座のバーめぐりの話しなど、面白い。謹厳実直を絵に描いたようなご尊父の横顔が思い出されて、実に苦笑を禁じえない。内容的にもっとも力が入っているのが、最後に配置されたご令息の検便の話だろう。公教育と戦う著者の姿勢が明らかになっている。現場の教員の対処に問題が含まれていることは著者の指摘のとおりだが、一々反応してしまう父兄の側も問題なしとしない。父兄の過剰反応、学校への責任の転嫁、それを見越しての学校側の対応、という悪循環が生じてしまっていることこそが問題ではないか。