先日この本を注文して読みましたが あまりの面白さに1晩であっという間に読破しました。 著者は数学史上に燦然と輝く3人の天才数学者の生まれ育った地を 旅しながら感じたその天才の生き様、人間性などを描く感動の名著。
教科書に載った一行足らずの完成された公式からしか<BR>数学者というものに接したことがありませんでした。<P>でもこの本は天才たちを天才という一言で片付けずに<BR>著者自身があとがきで触れているように<BR>彼らを育んだ「風土、自然、歴史、民族、文化、風俗」が<BR>彼らにどのような影響を与え、それらを通して<P>どのような数学が必然的にできあがったのかを描いています。<BR>数学は数字だけで書かれた無味乾燥な学問ではなくて<BR>むしろ人間の精神が築き上げた最高の芸術なのだと思いました。<P>国によって生み出される文学がまったく違うように<BR>生きた環境によって数学もまた形が変わってくるんですね。<BR>ラマヌジャンで言えば、インドという混沌と<P>雄大で芸術的感性と技巧がつくされた寺院の美が合わ!た結果、<BR>誰もが考えつかない「奇抜な」、それでいてとても<BR>「美と調和した」数学に到達したということがわかりました。<P>藤原さんの文章もとても美的でした。
イングランドの保守性と創造性に想いをはせる場面は印象的。「力学(ニュートン)、電磁気学(マクスウェル)、進化論(ダーウィン)はみなイギリス産である。近代経済学(ケインズ)もビートルズもミニスカートもイギリス産である。ジェットエンジンもコンピュータもイギリス産である」「ケンブリッジ大学は戦後だけで三十人以上のノーベル賞を輩出している。古い伝統を尊ぶ精神が、新しい流行や時流に惑わされることを防ぎ、落ち着いて物事の本質を見つめることを可能にしているのかもしれない。伝統を畏怖する精神が、人間に宗教的とも言える謙虚を与え、それが心や目の曇りを取り除くのかも知れない。あるいは古い伝統の中で日常を送ることが、非日常の中で、反動として斬新への爆発力を生むのかも知れない」(pp.62-63)というあたりはいいなぁ。<P> もっとも頁を割かれているのはラマヌジャン。「アインシュタインの特殊相対性理論は、アインシュタインがいなくても、二年以内に誰かが発見しただろうと言われている」そして「数学では、大ていの場合、少し考えれば必然性も分かる。ところがラマヌジャンの公式群に限ると、その大半において必然性が見えない。ということはとりもなおさず、ラマヌジャンがいなかったら、それらは百年近くたった今日でも発見されていない、ということである」(pp.241-242)というぐらいの超天才だという。彼の残したノートブックの解明は、未だに完成していないが「彼の美しい公式は、今や素粒子論や宇宙論にまで影響を及ぼしている」(p.258)という。