エッシャーのだまし絵をそのまま小説にしたような作品。読んでいるうちに、それぞれの登場人物の時間と空間の軸がねじれていることに気づく。手が届きそうで届かない、すっきりしない感覚を持ちつつも一気に読み通せる勢いがあった。<P>仙台駅を基点に交錯するそれぞれの人生。あれ?おかしいなと感じながら、行きつ戻りつして物語は収斂していく。名脇役で老犬がいい味を出していた。<P>前作「オーデュボンの祈り」も一風変わった作品だったが、これはそれをも凌ぐ快作だと思う。今後の井坂幸太郎は要チェックだ。
仙台の街を舞台に、5人の男女の物語が進行する。エッシャーのだまし絵(ハードカバーの表紙はこれですが、なぜ文庫本は変えてしまったのでしょうか?物語に非常に影響を与えている絵なのに残念)、老いた野良犬、好きな日本語を尋ねる白人女性、未来が見える男「高橋」など、共通の背景を織り交ぜながらそれぞれの物語は交わることなく並行的に進行していきます。<P>死体は自らバラバラになった後、再びくっつく。轢かれた猫が生き返る。「あれ、これってミステリーでなくて、オカルト本?」と思み進めていくと、最後にとんでもない種明かしが!これは、まぎれもないミステリー小説です。<P>だまされた後の爽快感がたまりません。2回目も読まずにはいられない、しかも2回目も楽しめる、一冊で2度おいしい素晴らしい作品です。また、登場人物も非常に魅力的。特に泥棒・黒澤にはしびれました。
ほんと、伊坂幸太郎の頭の中はどうなっているんだろう?<P>最初は「何だこりゃ」と思わせつつ、最後にはちゃんと「納得させてしまう」技術。<BR>見事というより他にない。