単なる観光者よりは踏み込んで、現地の人よりは一歩ひいてハワイイを見つめた、良質の紀行文。<BR>踏み込んでいけば自然と、アメリカその他の白人侵略の悲しい歴史にぶち当たるわけで、そういう事を読者にさりげなく意識させながら、ハワイイの素晴らしい自然と文化を紹介している。<BR>著者自身、侵略側が提供する快適な生活に身を置いている事は百も承知で、あえてそれを棚上げして侵略の歴史を説いている。<BR>人間とはこういうものだ、と言って達観するよりははるかに清い姿勢であると思う。<P>圧巻はミッドウェイ諸島の章。著者が敬愛するJGバラードの世界観を思い起こさせる。<BR>最終章でハワイイにある大型望遠鏡「すばる」を紹介しているが、「スティル・ライフ」の原点を見たような気がする。
ハワイ州の歴史や文化を丹念に取材した紀行文で、スタイルとしては司馬遼太郎の『街道を行く』に似る。<P> 取材は非常に綿密で幅広い邦文文献を当たっており、ハワイについての本としては相当な力作である。ただ気になるのは、著者がとにかくひたすら怒りに燃えている点だ。ありとあらゆる矛盾に怒りを燃やす正義感は理解できなくもないが、その怒りの主体である自分自身つきつめて考えればハワイを征服したアメリカ人たちと五十歩百歩の立場で快適な生活を享受しているわけで、ちょっと一方的かなと思う。司馬遼太郎の紀行文はその根本に「人間とはまことにしょうもないものである」という諦念があり、どんな悪逆を尽くした者達を取り上げる時でも、「しかし人間とは所詮こういうものではないか」という留保を伴っていたが、著者の紀行文はその点ずいぶん直線的である。読み手によってはそこに疲労を感じるかもしれない。<P> それと文庫本化した時に追加されたという脚注が非常に煩雑であり、本来なら本文に書き足すべき内容が大量に脚注として追加されていて大層読みづらい。脚注については著者自身あとがきで反省していたが、これはやはり改善すべき点であろう。
自信を持っておすすめいたします!私は現在、マウイ島に住んで11年になります。<P>この本の99ページから127ページ「タロイモ畑で捕まえて」に登場する人物や場所もよく知っていますし、よく会います。<P>著者の池沢夏樹さんは本当に、よく"本物のハワイ"を研究されていると感心いたしました。<P>ハワイの文化や風土、歴史を正確に伝えてくれようとしてくださっている「語り部的な本」だと思います。自然と生命に対する畏敬の念がわき出てくるような本です。ここまで詳しくハワイ文化を紹介した本は今までに読んだことがありませんでした。<P>この本を読んで、マウイという島に住んで、毎日、自然の恵みのなかにいられることを改めて感謝するようになりました。<P>どうぞ、"本物のハワイ"を感じてみたい方、ぜひ、「ハワイイ紀行」を読んでみてください!<BR>また、ハワイに旅行されるときには、どうぞ、持参してください。<BR>必ず、読んできて良かったと思いますよ。