カード社会や自己破産者の実態を鋭く描いた作品、として聞いていましたが、一人の謎の失踪女性を”追いかける”ミステリーとしても充分楽しめました。ひょんなことから、親戚の婚約者である失踪女性を探すことになった求職中の刑事が、彼女の失踪の原因を探りながら少しづつカード社会の生み出した恐ろしい事件の真相に迫っていくことになります。ただ、こういった「追いかける」型のミステリーにありがちですが物事が都合よく進みすぎるのが玉にキズ。終わり方は見事だと思います。
「フリーライター」という名の「安定した収入」のない仕事をしているもので、それまでクレジットカードは審査段階で落とされ持ったことがなかったのだが、昨年なぜか審査が通ってしまい、やっと1枚人並みに持つことが出来た。私は浪費する性格じゃないし、必要最低限しかカードは使わないと思うのだが、この小説を読んで消費社会のからくりみたいなものを学び、またそれによって人間として最低の尊厳すら奪われる生活を強いられた人々が実際、現実世界に存在しているだろう事を知り怖くなった。<BR> ヒロインの諸刃の剣の上を歩くような生き方は、強かさと脆さという両面を併せ持っている。だが、そういう生き方しか出来なかった彼女を私は責められなかったし、悲しい人だと感じた。その余りにも重い過去ゆえに。
この作品は、山本周五郎章を受賞したものだそうです。社会派の宮部みゆきさんの真骨頂といっても良いくらい、現代社会のカードやサラ金の恐ろしさを描いています。行方不明の女性を探し始めるうちに、どんどん謎が出てくる書き出しも、読者を引き込むようで、一気に読むことの出来る本だと思います。