著者はジャズ・ベーシストだが、正直、ジャズ界のビッグ・ネームとは言い難い人物だ。<BR>その中堅どころの著者が、ジャズに最も脂が乗っていた時代のジャズ・シーンの日常を淡々と描写していく。<P>ジャズにありがちな“破滅にまっしぐら”“狂人と紙一重”風な話はほとんどないが、ジャズ界の住人達の日々の暮らしがしみじみとした魅力を持つ。<BR>“熱気”よりも“味わい”の一冊だろう。
古いJAZZを部屋に流しながら、じっくりと楽しみたい一冊。<BR>今、流行の欧州のピアノトリオなど(それはそれで素晴らしいが)とは<BR>一線を画したブルース・フィーリング溢れる黒いJAZZの香りが、熱い息吹と共に<BR>耳元に迫ってくるような気がする。脈々と受け継がれるJAZZの遺伝子の<BR>源流を見る思い。この作品に因んだCDも発売されたので、BGMに如何?
著者はベーシストで、長い間ジェリー・マリガンのベーシストを務めたことで知られる。1950年代のニューヨークのジャズ・シーンやジャズメンの貧しくも、生き生きした生活を日記風に活写。この手の本は、あまり書かれていないだけに貴重。カウント・ベイシー、デューク・エリントン、ビル・エヴァンスなどの有名ミュージシャンの人となりが興味深い。好々爺然としたベニー・グッドマンが「グッドマン」でなく「イヤなオヤジ」だったことなど「新事実」も興味深い。訳者の村上春樹氏は知る人ぞ知るジャズファン。日記に併せて、村上春樹選のアルバムを巻末にまとめてあるが、これも翻訳に劣らず力作。(松本敏之)