ぬか床から人が生まれてくる・・・。<P>はじめはなんておかしな話だろうと思っていたけど、<BR>だんだんとスケールが大きくなって、<BR>いつのまにか生命の神秘を紐解くような壮大な物語になっていました。<P>細胞が死ぬほど願っているのは、ただ一つ、増殖。<P>全宇宙ではじめにうまれたたった一つの細胞。<BR>その細胞のすさまじいほどの孤独が、遺伝子に取り込まれて延々と伝わった。<P>この“圧倒的な孤独”が本当に“生命の起源”だとしたら・・・。<P>こんなことを私に考えさせてしまうこの作品の大きさ!<P>梨木さんらしいほのぼのしたやわらかさに、<BR>今回は遺伝子や科学の神秘が織り交ぜられた作品。<BR>梨木ワールドの進化を感じました。
死んだおばから引き継いだのはぬか床だった。だが、そのぬか床は<BR>普通のぬか床ではなかった。ある日卵が現れて、そしてその卵から<BR>孵化したものは・・・。生命の不思議さを独特の感性で描いた作品。 <P>人はどこから生まれてどこへ還るのか?お母さんのおなかから生まれて、<BR>最後に土に還る。そんな答えでは片付けられないものがこの作品には<BR>描かれていた。一般的な答えのようにしか生命は誕生しないのか?<BR>こんな疑問が浮かんでくる。「ぬか床や沼から命が生まれたとしても<BR>不思議ではない。」この作品を読むと、そう考えさせられてしまう。<BR>はるか昔、たった一つの細胞から今ある数々の生命が生まれた。<BR>その壮大なドラマ。ぬか床や沼の中にも宇宙は存在していたのでは<BR>ないだろうか。生命の神秘さや果てしない広がりを、感じずにはいられない<BR>作品だった。
読んでいて、「ぐるりのこと」で提示していた「他者と自己、その境界」のテーマだな、と思いました。ちょっと、SFで異世界で、エコロジーで、神話のように壮大で…。いつもと雰囲気が違って、梨木氏の新挑戦だと感じました。<BR> ただ、私は、「からくりからくさ」のあの日常が好きなので、なんだか、少し、登場人物が少ないような、かかわりが希薄なような、物足りない感じがしました。キーパーソンである風野さんという人がなんとも私としては想像しにくかったせいもあるかもしれません。(今回は、前半のちょっと怪奇小説じみた部分が好きです)。<BR> とはいえ、いつも梨木作品を首を長くして待ちわびてきましたし、この本も一気に読んでしまいました。これからも楽しみにしています。