そこに居るかのごとくLIVE感のある力作である。淡々と事実が綴られるが、著者と取材対象者との間に信頼関係が築かれていなければ語られることはない「人間の生(性)」が描かれ、それ故に重く切なくも清々しい作品となっている。脚色や解釈に頼らない、むしろそうしたものが邪魔になる作品は稀有であり、多くの方々に読んでみて頂きたい。ハンディキャップを持つ者を身近にしている立場からも作者の視点と距離感を高く評価したい。次回作への期待も大である。
『華氏911』を面白く観た。「プロパガンダ映画」「公平さを欠く」と批判する人が多いが理解に苦しむ。ブッシュの方が「公平」から程遠いし、政府のプロパガンダ的報道以外はタブーというのが米国メディアの状況だったのに、そのタブーを果敢に破り、隠されてきた映像を提示した作品が、なぜアンフェア? 「米国のイスラエル政府支援を批判してない。次作ではぜひ」との指摘も目にしたがそれも不思議。イスラエル問題を重大視するならその人が追及すればいいではないか。なぜムーアに「全て」を求める?<P>観たばかりの映画の話をつい書いてしまったが、障害者の性を扱った本書についてもある意味で同様の構図があると思ったからだ。「ないもの」の如く隠されてきた障害者の性に焦点を当てた点を評価しつつも、「興味本位はいけない」という“良識”を少なくない人が言う。解せない。思うに著者も世間から遠ざけられていた事柄に興味関心をもったから難しい取材に挑んだのだろう。とはいえ著者の本心は知らぬが、少なくとも私自身は興味本位で手にとった。興味本位でこのテーマに触れたらいけないのか。それなら結局は障害者の性に興味を持つことがタブーということではないか。健常者の性は興味本位でも許されてるのに? 文芸系の老舗の本屋さんから出てるこの本はどう見ても専門書ではない。今まで障害者の性など考えたこともない世間的マジョリティの興味や初期的関心を喚起するノンフィクション作品だろう。もっと専門的分析が社会にとって必要だというなら専門家を自負する人がやればいい。私自身は、非常にリーダブルである本書(ほんとに読みやすいです)よりも、専門書のほうが良いと言う気にはなかなかなれないけれども。
最近気になっていた言葉がそのまま題名だったので、読んでみました。<P>いくつかの取材によるものですが、私にとっては衝撃的で、セックスの意味って何だろうと考えさせられました。<BR>人それぞれで、障害の有無なんて関係ないはずなのに、社会ではいろいろな制限を受けてしまうのだなぁと、思いました。