雑誌に掲載されたルポをまとめたものなので、取り上げられたテーマは洋々ですが、どれも、著者のすぐれた視点と、どっか、とぼけていながら、確信をついたツッコミが、バツグンにすぐれています。<BR>とりあげたテーマもタイムリーで、話題にしやすいし、そのわりに、堅苦しいところもなく、仰々しくもない。友人、知人の世間話や一般論に付き合わされたときに、ツッコミを入れられる一冊です。
『からくり民主主義』と併せて読むことをおすすめします。<BR>彼の視点は、いつもシンプルで、明快です。<P>ふつうの人は、政治的立場や、大きな物語のなかで生きているのではない。<BR>それよりも、いまの生活を基盤にして損得を考えるし、マスコミが騒ぐ「何々反対」的な物語を、冷ややかな目でみていたりする。<BR>一方で、マスコミが騒ぐ話に、器用に乗ることができず、失敗してしまうトホホな面もある。<BR>いずれにせよ、「ふつうの人」とは、そのように、常にマスコミの論調と微妙にずれたところで、真面目に、セコく、不器用に、生活している。<BR>「トラウマ」「ゆとり教育」「資格ブーム」「地域通貨」など、<BR>マスコミで沸騰する議論とは全く違うところに、<BR>「ふつうの人」の真実があることを教えてくれる。<P>テレビも、新聞も、立場や意見を述べてはいますが、<BR>結局なにも真実を伝えていないことがよくわかります。
本書も『からくり民主主義』同様、世の中の思い込みやステレオタイプを鮮やかに覆していく。しかしその手つきはあくまでも愛情のこもったものであり、各章、爽やかな読後感が残る。前著と比較するならば、対象がニュース性をもったものよりも、より身近なトピックになっている。<BR>ただし、読み手は新たなステレオタイプに陥らないよう批評精神を持って読み進める必要はあろう。