私も泳げなくてスポーツクラブへ行って三年になるけど、自分の事と照らし合わさって、で文章がおかしくて、笑いが止まらなくなって涙が出て、まだ数ページしか読んでないのに、誰かに言わなくちゃって思って、作者に言いたいんだけどいけなくて、あーどうしよう。
筆者である40歳のおとっつあんはカナヅチである。彼が特に深い理由も目的もなく(そこが素晴らしい)、スポーツクラブのスイミングレッスンに通って泳げるようになるまでを描いた傑作ルポルタージュ。カナヅチな人から見たプールあれこれに関する視点、考察が群を抜いて新鮮で面白い。さらに考察が考察を呼び、とんでもなく飛躍しちゃって、脱線したまま深く追求していってしまう心意気に乾杯である。筆者本人が実直であればあるほど、文章がビッグウェーブのようにノリノリとなり、地下鉄車内で読むと、ちょっと恥ずかしい思いをするかも知れません。帯裏の村上春樹氏の推薦文のおかげで、本書と出会うことができました。ささやかだけれど、確かな幸せ。小確幸なり。
カナズチの作者が泳げるようになるまでのドキュメント。ただ中年オヤジの奮闘の書ではなく、不思議な雰囲気、まるで禅の修業を思わせる作品になっている。それはコーチである桂さんのキャラクターによるところが大きい。まるで禅問答のような指導が連発される。その指導内容は是非本書を読んでください。<BR>きっと、桂コーチはすごい美人さんのような気がする。<BR>また昼下がりのスポーツクラブの感じがすごくよく出ている。ちょっと退廃している感じが。<BR>しかし、本書は水泳の教則本ではないので、読んでも泳げるようにはならないと思います。泳げる人が視点を変えるには示唆があると思います。