とにかく面白い!私は理系の人間で幸いにもこの本の最後にある補講がすべて理解できます。そういう人には特にたまらない一冊だと思います。高校の数学の授業でいろいろ教える前に生徒に読ませれば良いのでは?と思いました。<P>高校生でも理解できる数式を証明するまでの世紀を超えた人々の努力、その一つ一つのピースがだんだんと埋まっていく様子、でも、もしそのピースの大元が間違っていたら…という不安、ちょっとした機転で論理がつながり視界が開けた瞬間の歓喜、それら全てがこの本に詰まってます。<P>久しぶりに読み終わるのがもったいないと思えた一冊です。数学の問題に関する書籍にも関わらず数式がほとんど出てこないのでヒューマンドラマとして誰にでも読めると思います。天才たちの情熱を感じ!て欲しいです。<P>現在は同じ著者の作品である「暗号解読」を読んでいます。
350年にわたる難問を巡る人間ドラマとして読めば大変面白い。だけどフェルマーの最終定理をどうやって証明したかを少しでも理解したいという人にとっては肩透かしを食った感じになると思います。後者から見ると星2つぐらいじゃないでしょうか。例えば「オイラーの贈り物」を時間をかけて読んで、オイラーの公式がわかった時と同じ種類の感動はこの本では多分得られません。まあ、フェルマーの最終定理とオイラーの公式じゃあレベルが全然違うのはわかるんですが、それにしても谷山=志村予想ぐらいからの解説をもっと丁寧にやって欲しかった。<BR>すごいレビューの数だし、星も多いので期待していましたが、ちょっとがっかり。だけどそれは自分がおっちょこちょいだからで、この本は悪くない。総合的に見て大変レベルの高い良書と思います。
「ある三乗数を二つの三乗数の和で表すこと、あるいはある四乗数を二つの四乗数の和で表すこと、および一般に、二乗よりも大きいべきの数を同じべきの二つの数の和で表すことは不可能である。」<P> これが、かの有名な「フェルマーの最終定理」だ。数式で表せば、<P> Xn+Yn=Zn、かつn=3,4,5・・・<P>を満たす自然数X、Y、Zの解は存在しない(ここでは、XnはXのn乗を示すことにする)という、極めて単純で明快な問題であり、その意味するところは現代ならば中学生にでも理解できる内容である。17世紀のアマチュア数学者フェルマーは、それを愛読書ディオファントスの「算術」の余白に書き込んだ上で、<P> 「私はこの命題の真に驚くべき証明を持っているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない。」<P>と記した。フェルマーの創出した数々の「定理」の中で、上に挙げた問題だけが証明不能の最後の問題として現代まで生き残り、そしてこの問題は歴史となった。「フェルマーの最終定理」という名の伝説は、350年の長きにわたり、数学者達を悩まし続けたのである。この難問に幾人もの数学者が挑んだが、その失われた証明を再発見することは不可能であった。ワイルズがそれを証明するまでは。<BR> <BR> これは、その難問に挑戦し続けた数学者たちの劇的な物語である。ピタゴラスから数学史を説き起こし、フェルマーに至り、谷村・志村予想を経てワイルズがこの難題を証明し、それを本来の意味の「定理」とするまでを、巧みに記した、無類の物語と言えるだろう。筆者のサイモン・シンは自身素粒子物理学の博士号を持つが、この抽象的で難解な数学的挑戦を、純粋数学の知識のない多数の読者に理解可能な物語として書き記すという、困難な仕事を見事成し遂げている。<BR> この本の読者になるには、数学的知識や、真理への探究心などは無用である。ただ、歴史的大事業を成し遂げた天才の偉業を知り、その感動の物語に浸りたいという欲望だけで十分なのである。