まず、この分厚さがいい。暗号の深い世界を紹介するにはこれ位の当然。暗号の世界には昔から興味もあり、えいやっで買ってしまった。後書きでびっくり。最近の私のbest bookである「フェルマーの最終定理」の著者ではないか、サイモンさんは。ほんとにおもしろい本をかくかたですね。本著は暗号は当然のこと、ヒエログラフから量子・光子の世界まで素人にも噛んでふくめるように本当におもしろく紹介してくれる。二次大戦の暗号でナバホ族の活躍がこのなかでは一番印象に残った部分。<P>サイモンさん、次ぎはどんな世界を紹介してくれるか興味しんしん。
とても興味深いテーマです。昔から現代までの暗号術(そして暗号解読法)の進歩、古代文書解読の為の暗号解読手法の適用など、とてもfascinatingです。著者の数理学者を思わせるような知的な語り口も気に入った。僕自身、紙と鉛筆を持って色々試行錯誤しながら暗号を解読することの苦労とbreakthroughをした時の快感も味わえた。<P>ただ、この本の後半になると、暗号が極めて発達して複雑になり、数理化、コンピューター化されているので、なかなか直感的に分かりにくくなってくる。そのため、素直に「面白い」と言うよりは、「勉強したな」という感じになってしまった。
著者は、ケンブリッジ大学で物理学博士号を取得した後、BBC放送の番組プロデューサーの経験がある人です。本書は、スコットランドの女王メアリの悲劇から、現在最も注目を浴びている量子暗号に至るまで、暗号のくわしい解説・社会に及ぼす影響だけではなく、暗号作成とその解読にまつわる人間ドラマまで生き生きと描いて、非常によくまとまっているという印象を受けました。<BR>とりわけ、第2次世界大戦時ドイツ軍が使用した暗号機械エニグマのメカニズムについて説明した第3章と、その解読に貢献した数学者アラン・チューリングの業績について説明した第4章が圧巻です。この2章だけでも読む価値があるといえます。<P>第5章では、インターネット時代の電子商取引のバックボーンとなる「公開鍵暗号技術」についてわかりやすく簡潔に説明しており、著者のサイエンスライターとしての力量を感じました。<BR>最終章での量子暗号の叙述については、若干さらっとしすぎていて物足りないところもありますが、巻末に"Further Reading"として文献、関連サイトも紹介されているのでそれを読めということでしょう。<BR>結論からいうと、科学書読解の楽しみ(暗号の仕組みについての理解)と歴史書読解の楽しみ(暗号にまつわる人間ドラマの鑑賞)の両方が味わえるため、読んでよかったという気持ちが強かったです。