ある作家の人に薦められて読みました。<P>ピアノという不思議な魔力を持つ精密で美しい楽器。それを再生する古い工房とイギリス人の作者がカルティエ・ラタンで出遭う。そこから物語りは小説のようにミステリアスに展開していく。<BR>ピアノはたくさんあるはずなのになぜ売ってくれないのか。<BR>古い建物の奥にある光あふれる工房では何が行われてるのか。<P>そして作者はある日、職人のリュックと知り合いになる。<BR>その日から作者はピアノを通じて、忘れていた豊かで繊細な音楽の世界を自分の中に再発見していく。その不思議な人生の変化が美しい文章で綴られていて、読者の私たちまで同時に音楽を奏でる喜びを思い出す。ピアノの話だけではない。<BR>外国人の作者が、難しいパリの裏町文化に少しずつ溶け込んで行く日々も描かれている。そして職人という、ものづくりに執念を燃やす人々のその個性と情熱に、そしてパリの街が持つ不思議な磁力にも感銘を受けずにはいられない。
この本は、2002年の夏にイギリスを2週間旅行している時に読み始めました。ロンドン、ケンブリッジ、エジンバラ、リバプールと旅しながら、時々インターネット・カフェに入って、日本の知人とメールをやりとりしながらの一人旅でした。旅の日程も中ほどに差し掛かったころ、日本からのメールで教えられたのがこの本でした。エジンバラの書店で買い求め、すぐに読み始めました。歩き疲れてお茶をしている時や、寝る前の時間、またリバプールでビートルズゆかりの地を巡りながら暇な時間に読んでいました。私はクラシックが好きで、ピアノを習ったこともわずかながらあるので、とても興味深く読めました。印象的だったのは、ピアノを調律したり、修理したりするときにしか見ることの出来ない「落書き」のことでした。中には100年以上前に製作された逸品の裏側に、様々な人々が書き込みをしている場合もあるようです。また、最後に、実在するモデルを探そうなんてことはしないで欲しいと、断り書きがしてあるのも、ほのぼのとしていました。でも、きっとこの本を読んだ多くの人が工房を訪れたことでしょう。
いい本です。<P>パリで暮らしているアメリカ人の著者が、自宅の近くで見つけたピアノ再生工房に出入りしているうちに、ピアノや、ピアノ職人、調律士、ピアノ教師等々、ピアノに関わる人たちと親しくなって…粗筋だけ書くとこんな感じですが、ピアノと、音楽を愛する人たちの、心温まるショート・ドラマが連なっていき、それが全体としては、大河ドラマになってる感じのノンフィクション。<BR>タイトルに惹かれて読み出したんだけど、とてもいい本でした。<BR>翻訳も丁寧です。<BR>たぶん、ピアノを習ったことのある人なら「うんうん、わかる!」って感じのエピソードがあったりして、懐かしい感じもします。<P>ピアノや音楽のことについて、ある程度知識があった方が楽しめますが(フランスとアメリカでの音名の違い…ドレミファソラシドとCDEFGABC…の違いとか)、なくても大丈夫。著者は丁寧に取材しているんでしょうね、ピアノの歴史とか、過去のピアニストの逸話なんかも出てきて楽しめました。<P>ピアノの歴史、ピアニストの歴史についてもっと詳しく知りたくなったら、「19世紀のピアニストたち」って本が別にありますが、併せて読むと楽しいと思います。<BR>あと、著者がセロニアス・モンクの自伝のことに触れていましたが、自分は読みながら「キース・ジャレット自伝」を思い出しました。本棚から引っ張り出して、読み返しました(笑)<P>読み終わってから、ピアノが弾きたくなる本…実際、弾きました(爆笑)<BR>いい本です。