時は幕末、混乱ぶりは現代の比ではなかったと思います。<BR>ある価値観(幕末では身分制度)が崩れた時代に、自分の身を助ける<BR>ものは一般的に通用するスキル(本書の主人公である猪山家の場合は<BR>経理能力)だという事が詳細な資料から推察できる作品です。<BR>この猪山家の混乱期の生き方は現代にも通じるものがあると思います。<P>薩長土肥以外の武士が明治政府にどのような経緯で重用されたかを<BR>推察できる側面からも興味深く読むことができます。<P>また、私は金沢に住んでいたこともあり非常に楽しく読めました。
難しい言葉もたくさん出てきましたが、今まで知らなかった<BR>学校で習わない「歴史」を知ることができた感じです。
よく図鑑などに「昔の生活」などと謳われて創造図と共に描かれる生活は、たぶんに筆者や絵描きの想像の世界や、現在の私たちの常識から導き出されたものに違いない。<P>「武士は食わねど高楊枝」という言葉はよく知られてはいても、それはいったい収入が少ないが故の困窮であったのか、食費以外に必要とされる支出が多岐に渡っていたからなのか判然としない。家計簿というものをつけていなかったらしい武家において、その経済的実像を掴むのは困難であったのだ。<P>しかし著者は幸運なことに運命の出会いとも思える僥倖によって、連続したある武家の詳細な家計簿を手にすることができた。そこから浮かび上がるのは、武家の経済的困窮の本当の姿であり、生き生きとした生活実態である。少しでも過去の私たち!の生活実態を、歴史的ロマンを持って想像したい方には、自信を持ってお勧めしたい良書である。