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あの戦争は何だったのか―大人のための歴史教科書 ( 保阪 正康 )

恥ずかしながら、私の持つ太平洋戦争についての知識といえば「真珠湾攻撃」と「終戦日」くらいしかありませんでした。<BR>そんな私が、目から鱗をポロポロとこぼしながら読んでおります。<BR>タイトルの通り、太平洋戦争とはどのような戦争であったかということが、私の無知な頭脳にもみるみると染み込んでくるようでした。<BR>なぜ起きたのか。どのように戦ったのか。<BR>今まで頭の隅に追いやられていた疑問にとりあえず明快に答えてくれています。<BR>とりあえず、と云ったのは、あくまでも初心者を対象にしているからで、ある程度知識のある人には甘いと感じるのかもしれませんので。<BR>ですから、星が5つというのは、私のようなビギナーにとって、と限定しておきます。

 本書のタイトル、帯の塩野七生氏による惹句、そして「善悪二元論ではなく、左右どちらにもバイアスのかからない視点から太平洋戦争全体を考察する」という前書き・・・それらに期待して本書を手にすると、完全に肩透かしを食らいます。<P> 読者は、2・26事件から降伏文書調印に至るまで、なんらの新事実にも、新鮮な考察にも、見落とされてきた資料にも触れることなく、太平洋戦争に関する一般常識的な記述に付きあわされます。<BR> しかも、多くの読者にとっては既知の、これまでさんざん書かれてきた事実を延々と書き連ね、ところどころに単純な「感想」(とても「考察」などと言えるレベルではありません)を挟んでいるだけ。しかも、その「淡々とした」記述の合間に、いまなお評価が定まらず新事実も発掘されつつある「天皇と戦争の関係」について、さらっと書き流しています。<P> 他の評者の方が、「参考文献すら載っていない」と仰っていましたが、いくつかの資料的な部分の記述をのぞき、参考文献すら必要ないほど安直に書きなぐった本、という印象ですので、参考にされた文献の著者に迷惑がかかるから載せなかったのではないでしょうか?(これは皮肉ですけど)<P> 大学の卒論レベルですらありません。左寄りの戦争関連本を読むと苛立ちを感じることがありますが、そういう自分の考えと相容れない主張の本でも、「カネ返せ」と思ったことはありませんが、この本は・・・<BR> 願わくば、私のように帯や前書きに惑わされて買う人がこれ以上出ないよう、早く店頭から消えて欲しいものです。<P> なお、本書の粗笨な記述よりは、かつてNHKが放送した「シリーズ太平洋戦争」や半藤一利氏の著作、ジョン・ダワー氏の特異な視点からの著作などの方がはるかにためになります。<P> でも・・・おそらく著者と出版社はこれらのことなんか百も承知で、新書ブームに乗っかって稼いでるだけなんでしょうね。。。

 一般市民でも、「あの戦争」について知っておくべきことが無理なく無駄なく網羅されている本だと思います。<BR> また、本書の最も優れた点は、一般市民でも、戦争に至る背景や戦況悪化の状況について、本質的、構造的な問題について理解できるような内容になっていることです。<BR> 本書の視点が感情論や思想論に偏ったものではない点も一般市民にとってうれしい。<BR> また、記述の仕方が丁寧かつやさしいので、非常に読みやすかったです。

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