マキアヴェッリは、極めて合理的な思考の持ち主で、それを処世術として文<BR>章に表している。塩野女史も彼にほれ込み、彼の解釈本を多く出している。<BR>原典に当たることをお勧めするが、手っ取り早くこの本を読むこともよいか<BR>もしれない。
本作は、まだ塩野七生氏が言論界の中で主流派の位置になく、<BR>それだけに一級の史料考証と、歴史学研究史の理解と整理に<BR>基づきながら、複雑な陰影を帯びた明朗な文体を駆使して<BR>イタリア・ルネッサンス期の卓越した紹介者としての地位を<BR>確立していた時代の佳作である。<BR> <BR> マキャヴェリという非凡で現実に即した直截的な思想家の<P>生涯を、著者独自の視点でスライスしてくれる。その断面の<BR>着眼点が面白い。冷徹な現実家としてのマキャヴェリの闊達<BR>で女性好きな、人生の快楽に浸り味わう一面を著者一流の<BR>共感と愛情を以って描き出す。また、「君主論」という書物<BR>の置かれた時代環境を、特に受け取ったエリートの立場を<BR>踏まえて叙述する点などは、著者ならではのものだろう。<P> 本作を含めたイタリア・ルネッサンス期を題材にしていた<BR>頃の著者の作品は、概して今日読んでも十分に堪能できる<BR>佳作が多い。思想立場問わず、是非一読を勧めたい。
塩野七生を理解するにはこの人を外しては考えられません。彼女の著作すべてに脈々と内包されている透徹した目は、マキアベッリそのものではないですか。世の中そんなに甘くない、天国に行きたい人は、地獄への行き方を知っているほうがどんなに役に立つことか。表面的なあるいは情緒的な反感はこの際すっぱり捨てましょう。生きることは戦いである。進化論を待つまでもなく、自然淘汰は世の常ではないですか。そこにこそ人生を生き抜くアルテがあることを認識しましょう。マキアベッリを知らずして、世の栄達はないにちがいない。あとは、あなたにフォルトゥーナがありますように!<BR>ついでに、サマセットモームが書いた「Then and now」もいっしょにどうぞ。