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| バルトークの作曲技法
(
エルネ・レンドヴァイ
谷本 一之
)
バルトークの音楽構造のマクロ面(楽節構成)やミクロ面(音程配分)に黄金分割やフィボナッチの数列が適用されていることを説き明かした名著。とはいえ、本書はただの無味乾燥な分析書ではなく、バルトークの作品分析を駆使して新たな音楽システムを構築しようと試みた野心的な本である。もはや近代音楽のシステムの中だけでは激しいコントラストが作れない以上、それを捨て去るか、前近代に遡行するか、或いはそこに何らかの別のシステムを導入するかせざるを得ない。著者レンドヴァイの思考は、既存の音楽システムを継承しつつそこに新たな構造を付加するというものだ。だから本書は近代音楽をヴァージョン・アップするための理論書といえる。そこで問題なのは、黄金分割というメソッドを「どのよう!に」付加するかであろう。著者はその要求にきちんと応えてくれている。この新たなメソッドを自然倍音列という既存のメソッドの「ネガ」或いは「inversion」としてうまく関係づけることにより、両者が有効に機能するようにプログラムしている。まだ青写真にすぎない観はあるが、自然倍音列のメソッドで事足れりだった近代の音楽理論に黄金分割のメソッドをうまく移植し得たことは大きな前進である。一つ目小僧にもう一つ眼球を移植する感じだろうか。その意味で、西洋音楽の形式概念に強烈な変容を生じさせた画期的な本である。この両眼の立体視法から何が新たに見えてくるか、それは読者の想像力に委ねられている。
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