飄然を求め、町田康という作家が旅に出たという。 <BR>そもそもその時点で飄然は否定されてしまうのに。 <P>仕事、借銭、通販の注文待ち、冷蔵庫の食べかけのチキン。 <BR>この状況下、旅に出るのは許されない。社会人として。 <BR>だから、作家は近場の東京界隈への旅とした。 <P>飄然を求める道程で眼前に入ってくるあらゆる物事に、 <BR>町田はことごとくなまでに、 <BR>阿呆のような、否、一級の解釈を展開させ、 <BR>苦笑、失笑、爆笑は保証される。 <BR>間違ってもそこに、冷笑はない。 <BR>そして、ほんのちょっとの、哀愁は残された。 <P>これ以上本書についてあれやこれや書くと野暮になる。 <BR>然らば読了瞬間のキモティなんぞを記すれば。 <P>“猛烈に何か書きたくなり、 <BR> 痛烈に書くことへの不安を抱かされた” <P>とでもいうような。 <P>読中は満たされた時を得られるはずだ。 <BR>既知が機知に富まれ奇知になるような……。 <P>―了―
今まで、著者の作品は小説しか呼んだことがなかった。が、こういう感じの作品もいいなぁと。<BR>巷に「幸せになるためには、笑顔で・・・」みたいな本があふれる中、著者の人間くさい感情に何度も笑ってしまったし、はっきり言って安心した。別に、後ろ向きでもいいんだって。<P>装丁も、とても素敵。本棚には、カバーをはずして置きたい、そんな一冊である。