子供の学歴と親の収入の相関関係が話題になるのは昨日今日に始まった話ではなく、少なくとも私が高校生の頃からありました。しかし、親の学歴、親の収入、親の職歴、子供の学歴、子供の収入、子供の職歴がどれほど関係するものか、そして団塊の世代からその階層が固定化されたことなどを社会統計から読み取れるとは思いませんでした。著者は新進気鋭の社会学者であり、初めての新書執筆のようで気負いが感じられましたが、研究テーマは非常に興味深いので、2005年のSSM調査の分析も期待しています。
「まじめに努力することが大事だ」といわれつつ、努力したからといって報われるとは限らないし、相対的に小さい努力で報われる人もいる現代日本社会。不平等じゃないか。そして、そうした現象が起こるのは何故なんだ。--そんな誰もが持っている漠然とした疑問に、統計的「証明」付きで一つの明解な回答を与えてくれる本です。結論は、誰もが昔からある程度うすうす感じてきたことで、特に驚くようなものではないでしょうが、それを統計的に証明してみせたところにこの本の価値があります。
SSM(社会階層と社会移動)調査結果の"客観的"な分析に基づいていた社会分析。いわゆる学者による学者のための本というより、<P>筆者の危機感に裏打ちされたプロパガンダの書。筆が滑りややもすると"ひとりよがり"になりかねない危うさを孕みつつも、抽象的な"市民"によりかかることなく、現実の社会に起こっていることを批判的に捉える、筆者の社会を見る視点に共感を覚える。