これまで、小説の批評は読んだ感想や感じた印象を表現するものと思っていましたが違いました。<P>小説を「読む」というより「理解」するためのテクニックが満載です。<BR>この本を読んでると「この人はすごいな~」とつぶやく事が何度かあります。<P>読んでみてください。小説を新たな気持ちで読んでみたくなりますよ。
僕は、小説をノンジャンルで、古今、洋の東西を問わず、月十冊ずつぐらいのペースで読んでいるのだが、今まで、学問としての「批評理論」なる、ヤヤコシそうなものには全く無縁だった。それでも十分、小説を楽しめるものだと思ってきた。<BR> しかし、この本に出会ってその認識はナイーブなのだと、考えを180度変えられた。<BR> 「批評理論」を勉強し、その知識を使って、小説の構造・修辞を分析し、精密に読解していくことで、漫然と字を追うだけの読書からは、得られない濃厚な読書体験が得られるのだと筆者に啓蒙され、納得し、感動した。<BR> この筆者の文章はとても論理的で明晰であり、論旨は非常にわかりやすい。そして、彼女の文学的知識は該博である。薄い本だが包含している情報は多い。<BR> 僕は、この本をきっかけに「批評理論」を勉強しようという意欲を喚起させれた。<BR> 小説をもっと楽しみたい全ての人におすすめします。
複雑化する批評理論の全体像について、最小限の技法と理論についての鳥瞰図を与えてくれます。著者の懸念にもかかわらず、”残骸の寄せ集めのような奇怪な様相(238ページ)”は呈していません。私自身は、forstrerのaspects of the novel以外は読んだことがなく、george steinerの作品を最小限の道しるべもなく、試行錯誤で読み続けてきましたが、この著書を読むことにより、若干の基本道具の整理ができました。技法や理論については、どれも単独では当たり前の話ばかりなのですが、あるひとつの作品を題材として、これらが説明された場合には、陥りがちな無味乾燥さを避けることができるわけです。もっともこれには著者の深い学識と””フランケンシュタイン”という非常に適切な題材の選択が大きな理由なのでしょう。このような基礎的な常識と訓練は若いときに受けておくべきであり、このような講義を大学で受けることのできる今の学生はやはり”幸福”なのでしょう。