働くということ - グローバル化と労働の新しい意味 みんなこんな本を読んできた 働くということ - グローバル化と労働の新しい意味
 
 
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働くということ - グローバル化と労働の新しい意味 ( ロナルド・ドーア )

労働という問題を通じて、主に戦後から、現代にいたるまでの経済、社会思想と現実の社会を読み解く現代社会論。労働哲学や労働経済などの専門的な研究は多いが、それらを啓蒙的な形で論じた本は決して多くない。長年日本を見続けてきた著者なだけに、日本についての言及も多く、労働を通して現代社会を考えたい向きにはお勧めの一冊。<BR>ただ、いかにも翻訳が読みにくく、さらにはチャプターの中の細かい区切り方なども不自然なものが多い。原著は講演などをもとにしたもののようなので、改めて書物として日本語で出版する場合、より読みやすい形で出すのは翻訳者や編集者の責任だろうと思う。できれば訳文や構成も直して再構成し、本書をより普及させてほしいものだ。<BR>したがって内容のよさにもかかわらず、書物としては良い評価を与えられない。

 人は労働して対価を得る。ただし私が思うに、その仕組みは公正を欠いている。公正な対価を得るにはどうすれば良いかを知ることを期待して読んだ。<BR> 著者は社会学者で、社会学も経済学も資金の動きを研究対象とするが、社会学ではさらに社会の仕組みも視野に置く点で、研究範囲が広いようだ。<BR> 労働を”労働力”として個人から独立したもののように扱いうるかどうか。そのあたりが社会構造と関係して、いくつかの類型になるようだ。著書の中で、これといった結論が得られるものではないが、世の中の労働をめぐる考え方やしくみのありようを捉える意味でわかりやすい。

多くの示唆に富む書籍だが個人的に最も着目したのは、グローバリゼーション下の「公正」と「収入格差進行による社会的連帯の希薄化」いう著者の指摘だった。著者は「公正は」「各国の伝統文化と関係付け」されるが「起因する」わけではなく「思想・経済・権力」三者間のフィードバックは複雑に連鎖し、一概に過去からの連続性に公正さが担保されるのではない、と明晰な分析を見せる。ここは現在のグローバリゼーションにゆれる日本への示唆として重要だ。直近の雇用調査において「社員」と名の付く形態でも3割は契約・派遣へのポートフォリオが進み、その結果明らかに収入格差は進行する事が予測される。その結果社会連帯性が希薄になりつつある結果、徐々に地盤を固め行く庶民感情傾向は「伝統と保守」への回帰だ。そう考えると小泉政権の「規制撤廃・民営化」等グローバルへの競争戦略を邁進させると同時に、希薄化する「一億総中流」の連帯概念として「伝統と文化の日本」をイデオロギーとせんとしている事が連続的に整理がつく。私自身は左派・右派どちらでもないが、果たして「伝統」というものだけが国家ビジョン=国民統合・行動規範として果たして説得的かは大きな疑問があった。西部邁氏らによる「公民教科書」を通読すると、「伝統」を核として国家行為を整理しても結局説明がつかず、国家戦略自体が各々の時点で注力すべき事柄に実利的にシフトしてる事は明白で、この点もまさに著者の指摘と合致する点だ。「社会モラル低下」「企業経営の混迷」ら多くの問題を短絡的に「過去の日本型理念へ回帰すれば立ち直る」といった具体的制度が提示されない根拠のない言説が一人歩きし、それに縋る傾向もある。しかし、『価値基準』とは混迷の中で全体が悩み、その中で初めて現れる「破壊的創造」ではないだろうか?本書は「伝統の連続性」固執と「金融・株主優先」功利の二項対立でなく、バランス感覚を持って考える機会を与えてくれる。

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