一般招集者の戦争体験記は複数ありますが、本書は戦争が終わり捕虜となった後の話であり、大変ユニークです。<BR>この捕虜収容所で行われた事は未だに世間に出ておらず、当時イギリス及びイギリス人がどれほど黄色人種を蔑み、人間と思っていなかったのか、を彼らの言動の端々から感じる事が出来ます。<P>彼らの日本人に対する態度を読むうちに大変な不快感に襲われますが、それをしっかりと乗り越えた日本軍人のバイタリティと柔軟性、発想の豊かさには賞賛を送りたくなります。<BR>捕虜監視役のインド人が、何でも器用にこなし、どこからともなく資材を集めてきて、それを加工してなにがしかの製品に仕上げてしまう日本人を、「唖然とした表情で」見つめるさまは、日本人の持って生まれた優秀さを表していて、ホッとさせられます。<P>戦地での戦いだけではなく、武器を持たない戦争があったことを知り、大変驚くと共に、感銘を受けました。
今、日本に生きる人達のなかで、第二次世界大戦のイメージはどんなものなのだろうか。<P>原爆。日本軍によるアジア諸国への侵略。従軍慰安婦。庶民の貧しい生活。<P>原爆以外のイメージは「日本は悪いことをした」というものが殆どなのではないだろうか。なげかわしいことに。<P>しかし、日本のために戦ってくれた兵隊たちは、日本のためにアジア諸国のために、悲惨な思いを沢山してきたのだ。白人による屈辱的な差別。劣悪な設備の元の劣悪な生活。<P>とにかく、この本を読めばわかる。どんなに屈辱的な辛酸を舐めて我々の先輩たちが頑張ってくれたかを。そして戦争はいやなものであるけれど、その人達の苦労があったからこそ、私たちがいま、不況とは言えど豊かな日本の中で暮らせているのかということを。<!P>著者はもちろん上記のようなことを感謝して欲しくてこの本を著したわけではないが、ここに無表情に語ってある脈々とした事実が、否が応でも私たちに、英霊たちへの感謝の念を思い起こさせるのだ。
大岡昇平、小松真一、山本七平などの著作から、アメリカ軍の捕虜収容所の様子を知る機会が多く、イギリス軍の捕虜収容所も同じ様なものと思い込んでいた私だが、それが間違いであったことに気付かせてくれたのが本書で、ソ連の収容所のような過酷さでなく、もっとソフトな残忍さで人間を支配する術を知っているのがイギリス人だと思った次第である。米・英・露のうち、どの収容所に入りたいかと問われれば、私は迷わず米を選ぶ。<P>また、インド兵やビルマ人に関する記述も興味深い。インドが長らくイギリスの植民地であり続けた理由の一端も垣間見えるし、ビルマの反英・親日感情も意外である。<P>それらを通して日本人を再認識することも出来るが、演劇班に関する部分などは笑える。様々な分野の専門家がいたことや、部隊間のライバル意識が本格的な演劇を可能にするのだが、立派な衣装や舞台装置を揃えられたのは、盗みの技術に長けていたせいでもある。<P>ビルマ人、グルカ兵、インド兵、イギリス兵、日本人捕虜の比較から、民族による価値観の違いと言うものを考えさせてくれる好著でもある。