著者は末期患者200人余の臨床インタビューにより、死を告げられた者が何を考え、どう行動するかをドキュメントで伝えていることは感動的である。しかし、この「死への5段階」否認・孤立→怒り→取引→抑鬱→受容というステップは、人々が人生の出来事の中で必ず辿るスッテプとして当てはまるのだ。多くの人は、身の回りの出来事に対して上記の5段階を経て、自分の行動を起こしているはずである。<BR>否認「わが子が誘拐された。いやうちの子に限ってそんなはずはない」<BR>怒り「なぜ、私の子を誘拐するのだ!許せない」<BR>取引「わが子のためなら、何でもする。どうか返してほしい」<BR>抑鬱「こんなひどい目になぜ合わなければいけないのか?それにしても私は無力だ」<BR>受容「そうだ、街頭に出て救出を訴えよう。それしか道はない」<BR> このような5段階を私たちは、無意識の思考の中で辿っているのだ。
私がこの本に出会ったのは、わずか13才の時。精神科に看護婦として勤める母が愛読していた事で、タイトルのインパクトから好奇心をくすぐられて読んだのが最初だった。13才の私にはどう読んでも「死」への恐怖が強調されているようで(怖かった…)と印象に残っていた。そして今、32才になり、友人・我が子を見送り、いずれは母・そして私にも必ず訪れる「死ぬ瞬間」をいかに迎えるのか?そのために日々をどう生きて行くのか?皆が恐れてやまない「死への恐怖」のメカニズムを、精神科医である著者が見事に解き明かしてくれている。13才のあの時、読んでいて良かったとも思える。トピックが「死」であるからといって、子供には…などど思わず、直面する現実を親子で考える時間のきっかけにさえなる。良書とはこういうものであり、これはそう呼ぶに相応しい1冊だと確信する。
静かな死に出くわしたことが無かったため、この本を買って読みました。<P>友人3人を交通事故で亡くし、痴呆症ですべてが分からなくなった祖母の<BR>介護を続けていた頃、尊厳のある死というものがそもそも何なのかと<BR>手にとったのを覚えています。<P>自分にたちもどって60歳以上まで生きた親族がいない癌家系にあり、<BR>父親はその年齢となり、自分も折り返しを迎えた今、再度手にして<BR>ゆっくりと読み解き、人生を豊かにしたいと思えた名著です。