「誰でもいずれ死ぬことはわかっているのに、誰もそれを信じない。信じているなら、ちがうやり方をするはずだ」(85頁より)とモリーは話す。わかるということと、信じるということの差はどれほど大きいことだろう。その差は、人間の悲しさを知るだけの体験があったかどうかで生まれる。そして、病気に直面した誰でもがモリーのようには語れないことを思えば、モリーがいかにその体験を自力で乗り越えようと「考えてきた」人間であったのかが心に迫ってくる。<BR>訳者あとがきで、曾野綾子さんの言葉が引用されているー「愛を発生させるのは、人間の悲しさを知ることだ。そのような人間が作る仕組みのもろさと悲しさを骨身に染みて知ることである」と。本書にはモリーの愛が溢れ出ている。
限られた時間しか与えられていない自分の人生を、単に人糞製造器にしか値しないようにはしたくない人は読むべきだと断言できる。難しいことではなく、自分の価値観をどう持つかに鍵があると気付かせる本ですね。垂れ流される価値観に目がくらんでいる間は、一番大切な人をもないがしろにし続け、自分も決して満たされないことに一日でも早く気付くべきだと読みとれます。簡潔で平易な文。それだけに万人に確実にメッセージが伝わってきます。無駄な言葉は何もない研ぎ澄まされた迫力。あっと言う間に読み終わり、何度も何度も読み返すことでしょう。何年か間に読んでから10回も読んだのに、読む度に新鮮。こんな力強い本に出会えたなんて感謝の一語。<BR>アルボム氏の新作の「天国で会う5人」と共に、人間として生きたい人は読むべきだと思う。
教え子に語るモリー先生。講義を受ける著者の脇に座って、自分もモリー先生の講義を受けていくような感覚を持ちました。<BR>ページをめくるごとに、自分の価値観が圧倒されました。<BR>そして、今まで誰に尋ねても納得の行く答えをもらえなかったり、もしくは気恥ずかしくて質問することさえできなかったりしたいくつかの質問に、答えをもらえたように思います。<BR>こんなにじわじわと、一節一節を思い出すだけでしみじみと泣けてくる本を普及版にしてくれるところに、出版社の良心を感じます。<BR>その「一節」は、この本を手元に置かれるすべての人の心の中に生まれることでしょう。